2004年 2月 3日(火)

心に残った新聞記事

   「靴を隠した君へ」

「先生、また靴がありません。」
児童が沈んだ顔で訴えてきた。
私は、肩を叩いて「気にするな」と口にした。
教室に残っていた子ども達に協力を求め
靴捜しを始めた。
 
この子の靴が隠されるのは、これで五回目だった。
最初はちょっとしたいたずらだと思った。
靴箱の近くに放置されてあった靴は、すぐ見つかった。

三日後、また隠された。
今度は簡単には見つからなかった。
一時間ほど捜して
狭い側溝のなかに押し込まれている靴を見つけた。
三回目は、少し離れたところにある1年生の
学級園のなかに、土をかけて隠してあった。

私には、誰が隠したのか見当もつかなかった。
学級の子どもたちには、簡単に事実を伝えた。
靴隠しはなくならなかった。
四回目は池に投げられていた。
教師が交代で靴箱を見回るようになっても
目撃者は出てこなかった。
私は、靴をビニール袋に入れさせ教室に持ち込ませた。

二週間が過ぎて、もういいと思い
靴を靴箱にいれさせるようにしたその日に
五回目の靴隠しが行われた。
私は、半ばあきらめながらB4・1枚に書きつづった。


    「靴を隠す君へ」
 こんにちは。
 今日も、また君は誰もいない靴箱で靴を見つけ
 手に取りどこかへ持ち去った。
 その時、君はどんな顔をしていたのだろう。
 笑顔のわけがない。

 今度また靴を隠すなら、近くにある鏡を見てからにしてください。
 こそこそと人の靴を隠して
 喜んでいる人の顔をじっくり見てからにしてください。
 靴を隠した君が誰なのか最後までわからないかもしれない。
 そして、いつの間にか靴隠し事件の事を、
 隠された友達の悲しみを、みんな忘れていくだろう。

 でも君は、いつまでも忘れてはいけない。
 靴隠しは君がした事なのだから。
 絶対に忘れてはいけない。

この手紙を子どもたちの前で読み上げ
そのコピーを一人一人に目を見ながら手渡した。
靴隠しは、五回目が最後になった。
私は、この手紙で訴えたことが
靴隠しを続けていた子どもに届いたのだと信じている。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

この先生はすごいなあと思った。
こういう時、犯人がわかった方がいいのか
わからない方がいいのか、よくわからない気がする。
幸い、うちの子どもたちはこのような事がなかったけれど
同じ事を聞いた事は、何度かありました。


 




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