2004年 11月 19日(金)

「暇はないけど、寂しいので」パート1

 忙しくてなかなか「研究室だより」も更新できません。少し寂しいので、書く暇がないときにはこれまで書いたものを「暇はないけど、寂しいので」シリーズとして載せていきます。今回はパート1として、2004年度「世界経済論�機廚梁茖渦鵐咼妊�講義のリアクションペーパーへのリアクションを載せておきます。
 毎回の講義終了後、ここ数年、受講生諸君には「リアクションペーパー」というものを書いてもらっています。これは小テスト用紙であり、また質問用紙でもあります。毎回の講義内容に関する小テストへの答えを書いてもらったり、質問を受け付けたりしています。これに対する解説・解答から翌週の講義を始めるわけです。最近はこんな感じで講義を進めています。
 ビデオ講義の時には、B4用紙1枚に、ビデオへの感想、講義への感想・要望・質問、あるいはカリキュラム等への質問を書いてもらうための「リアクションペーパー」を配ります。翌週、そのリアクションペーパーへのリアクションを私から配り、解説しています。「←」が私からのリアクションです。

 卒業生の方々は、最近の講義の状況などを想像してみて下さい。

【2004年度ビデオ講義1 リアクションペーパーへのリアクション】
1.「奪われた緑のデルタ〜ナイジェリア少数民族の闘い」への感想
(1)一般的感想
*頭の中をグチャグチャにえぐられた感覚。ショック。見ていて涙が出そうになった。
*オゴニの人々をまるで「害虫」のように扱うことへの激しい怒りと嫌悪感。
*軍部の抑圧は、新聞で読むより、ゴルゴ13で描かれているより生々しいものでした。
 ←昔、梶原一騎原作の「カラテ地獄変」という漫画がありましたが、この中では南米軍事政権による凄惨な拷問シーンが出てきました。
*第二次大戦期のドイツにおけるユダヤ人虐待、アメリカによるイラク人捕虜虐待に通ずるのでは。
 ←どこかでつながっているかもしれませんね。七三一部隊による人体実験も含め。
*人権が無視されてまで開発が進むのなら、開発などしない方がよいのではないか。
 ←日本の開発論者の間では、「国」の発展のためなら、「人権」擁護など後回しという議論が結構幅をきかせています。嘆かわしいことです。拙著『可能性の政治経済学』(法政大学出版局、近刊)はそれに対するささやかな反発でもあります。
*オゴニ族の心の奥からの消えない意志の強さに感動し、ケン・サロウイワが獄中にいながら人々に伝えようとした意志の強さを知り、何と表現したらよいか分からないが、ビデオを見てよかった。
*「非暴力運動」の限界がよく分かった気がした。
 ←でも、だからといって武力闘争をすれば泥沼化しますよね。まあ泥沼化しているのが現状ですが。ですから、泥沼化する前に手を打つことが必要なのだと思います。さて、どんな「手」があるでしょう。
*南アでのワールドカップ開催が決定した時、アパルトヘイトやスポーツ以外でアフリカ大陸の実情を知ることができたのはよかった。
*今回感じた感想や気持を忘れずに、これからの授業に取り組んでいきたい。
 ←そうしてください。そういう気持を持っていたただいたのなら、今回のビデオ講義は「成功」です。
*「南北問題は終わっていない」ということを実感した。
*「南北問題は解決しなくてよい」「解決しない方がよい」という意見を聞いたが、この弾圧が貧困と北の利益の優先に根ざしているというのなら、南北問題は絶対に解決しなければならない。
*民主主義の欠如が貧困の原因かなと思った。南の国々の統治システムにも原因がある。
 ←アマルティア・センをはじめ、リベラルな開発経済学者はこう考えています。センの『自由と経済開発』(日経新聞社刊)を読んでみてください。
(2)何とかできんか!という思いを述べた感想
〈ナイジェリア政府に対して〉
*経済制裁を加えられないか。でも経済制裁で一番困るのは末端の国民だし。
*一国の政権に文句を言えるような世界的規模の組織があったらいいと思う。
 ←万能ではありませんが、様々なジャーナリズム、NGOなどが頑張っています。インターネットの使い道。
〈石油会社シェルに対して〉
*世界的企業なんだから、もっと責任を持て。
*シェルも石油で儲かっているんだから、ケチケチしないで環境被害防止の設備ぐらい作ればいいのに。
*今後シェルでは給油しない。
*今回はシェルだったけど、他の企業においてもこれと似た状況があるのではないか。
 ←世界的な大企業に対して何ができるか。企業の経営方針に一市民が意見を言えるのか。企業戦略をもっと市民社会の発展に貢献するものとはできないか。難しいけど、様々な試みあり。
 �‐ι淵椒ぅ灰奪函Ь紊琉娶�にもあるとおり。
 ��株主となり株主総会に参加:「一株運動」というのが昔からあります。水俣公害問題でも、チッソの株主総会に被害者が参加し、自らの意見を訴えました。
 ��「社会的責任投資」(SRI)の制度化:配付資料参照。

〈自分自身に対して〉
*具体的な解決策のない現状を見せられると虚しくなる。
*たくさんの疑問と何も出来ない自分に対する情けなさが生まれた。とても悔しい。何かできることを探したいと強く思った。

*兵士を運んでいる車が「いすず」だった。ビデオを眺めている自分は客観的な立場ではなく、弾圧に手を貸す側にいるのかもしれない。
 ←前も言ったとおり、先進国であり、世界的企業の本社が数多く存在する日本の国民であれば、やれることはいっぱいあります。

2.平野克己『図説アフリカ経済』(日本評論社、2002年)より
◆「1990年代の紛争は、アフリカにおける従来の紛争とは明らかに異質である。そこにはイデオロギーらしきものが存在せず、なんのために戦っているのかがわからない。一々の経緯を辿ると、権力の腐敗と保身、手段を選ばない権勢欲と犯罪的暴行が、まるで膿のように吹き出している。──────これらの紛争を“部族対立”とみるのは誤りで、民族主義の高揚などない。あるのは、権力以外に富の源泉が存在しなくなった国家的窮乏と、生産活動に期待を持てなくなった貧困と、追いつめられた状況のなかで最も確実な富として残った、鉱区をめぐる争奪戦である。」(170-71頁)
 ←シエラレオネのダイヤモンド、ナイジェリアの石油、等々。富の源泉が権力だけという状況は大変つらい。権力闘争が生活闘争になる。
◆「いかにも貧しい国で、わずかばかりの鉱物資源を頼りに武装集団が形成され、殺戮行為を継続できるのは、紛争を引き起こすための費用がそれだけ安くなったからである。冷戦の終結後、大量の小火器が世界中に安価で出回っているのに加え、若年失業者は都市にも農村にも堆積している。兵力は児童誘拐によっても補充される。利権だけを回転軸にして、イデオロギーも大儀も見出せない残虐な殺し合いが、現在も続いている。」(171頁)
 ←嗚呼、「平和の配当」。数万円の自動小銃。数百円の対人地雷。少年兵と麻薬。武器輸出大国が国連安全保障理事会常任理事国(アメリカ・イギリス・フランス・ロシア・中国)であるという現実。

3.学生からの感想・要望と矢野からの「こたえ(らしきもの)」
(1)講義に対して
*リアクションペーパーに対するリアクションが楽しみ。
*気合いが入る。いろいろと考える機会を与えてもらっている。
*教科書がない分、レジュメがあるわけだが、資料はもう少し多くてもよい。
*ビデオ講義をもっと増やす!
*「講義中、よく寝ていてすみません。」「テンポがよいので眠くならない。」
 ←まあ、いろいろな意見があるということですか。
*読書案内や講義紹介が役に立った。
*レジュメに記入することが分からないことがある。
*「早口で困る。」(留学生)「早口で困る。」(一般国内学生)
 ←誠に申し訳ありません。例年出てくる意見です。善処します。
*板書を分かりやすく。
*『イミダス』とかって必要ですか?
 ←便利ですよね。でも必携ではありません。あと参考になる辞典類として、岩本武和・阿部顕三編『岩波小辞典国際経済・金融』(岩波書店、2003年)、渡辺利夫・佐々木郷里編『開発経済学事典』(弘文堂、2004年)を挙げておきます。
*世界経済論をとると、どんなふうに就職に役立つのでしょうか。
 ←さあ。何の役にも立たないんじゃないでしょうか。そういう基準で講義やってませんので。
(2)カリキュラム・制度等に関して
*大学狭すぎ。教室狭すぎ。学生多すぎ。食堂込みすぎ。駐輪場少なすぎ。
 ←すみません。すべて大学側の怠慢です。地域政策学部で学科増を実施し、入学定員が増えているのに教室の増設が後手に回っているわけですから。
*駐車場の問題
 ←一応弁明させていただきますと、「足りている」ことになっています。また河川敷駐車場は、あのままの形で使うしかありません。
*セメスター制導入のデメリット(前期集中・後期集中科目と必修科目(ゼミ、語学等)のバッティング、履修登録の仕方等) 
 ←履修登録を前期、後期に分けるということは来年度から実施予定。
*制度変更に伴うデメリット(配当年次・単位数・最高履修単位数等)
 ←移行期の学生がわりを食うことになります。申し訳ありません。
*大学内の販売を生協が独占している!
 ←「生協」は営利目的で存在しているわけではなく、あくまでも生活「協同組合」です。学生、教職員の「出資」で成り立っています。経営努力は必要だと思います。もっと問題なのは、学内に蔓延っている「自動販売機」だと、私は思いますけどね。
*休講掲示等 
 ←事前連絡が基本だからまずは教員のモラルの問題。急病等は仕方ないが。Iモード等で配信予定だったはずなのに、その後、どうなったんでしょうか。今やこんなのどこの大学でもやってますけどね。
*コンピューター室の使い勝手の悪さ
 ←1号館コンピュータールームのフリー利用が禁じられていることの問題。何の展望もなくあそこにコンピュータールームを作ったのが問題。
*1年次から「入門ゼミ」のようなものを。
 ←今年度新入生からゼミは2年後期からになりますが、1年次にはどうでしょう。「教員の意識」(週2日出講・担当科目4コマ)が壁になると思います。
*経済学における「基礎科目」を必修にせよ。
 ←こうした意見、よく聞きます。何を基礎科目とするか、基礎科目をどのように開講するかということがいつも問題になります。創立50周年を目前にして経済学部も大きな改革の可能性がありますので、その時にいろいろなことを変えていこうと思います。この4年間で経済学部の専任スタッフが10人以上停年退職を迎えますので、その意味でも大きな変革期にさしかかっていると思います。
*どうせ改革するなら、もう少し法学系の教授を集めて「高崎法経大学」にしてはどうか。
 ←あり得ない話ではないでしょうが、個人的には反対ですね。「法科大学院」ばやりで法学部の生き残り競争は激烈です。新参者がどうこうできるとも思えません。
*留学しやすくしてくれ。
 ←ゼミを「通年」としている以上、無理ですね。せめて単位認定だけでも半期ごとにすればいいと思うのですが。あるいは、留学中もゼミに関しては、特別な単位認定方法を認めればいいのですが。
*学科選択とゼミ選択のリンク
 ←賛否両論あり。
*夏休みをもっと早く。
 ←今のところ、無理です。
*昼休みをもっと長く。
 ←たとえば、昼休みを1時間にすることなど、その気になれば、すぐにできます。障害となるのは、一部教職員の「意識」のみ。
*プールを作ってくれ。
 ←今のところ予定なし。ラジオのサテライトスタジオのない大学はあっても、国公立大学でプールのない大学など聞いたことがありません。
*8時50分始業・休み時間10分化について
 ←おおむね好評なのですが、「教員は8時50分に来ない」など、一部に批判あり。
*図書館の開館時間(日曜開館問題を含む)
 ←高崎経済大学附属図書館の開館時間は他の公立大学と比べ長い方です。人件費、光熱費等、日曜開館については難しい面あり(ただし、名古屋大学等、国立大学でも実施例あり)。




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