2004年 6月 22日(火)

就職指導?

 いつの頃からか、ゼミでは、前期打ち上げソフトボール、スーパーコンパ8時間耐久当日の午前中を使って、3年生に就職ガイダンスなるものを行なっています。ノウ・ハウ的なものを授けるというよりも(というか、ノウ・ハウなど、就職活動をしたことがない私には分かりません)、自分のこれまでの経験、人間関係、それなりに得てきた知見・情報などに基づき、「進路を決める」時に考えなければならないこと、考えた方がよいことを、ゼミ生にあらためて提示することを目的としています。ビデオを観たり、就職活動を終えた4年生の話を聞いたりして、「進路」をじっくり考える最後のチャンスが、現実的には3年の夏休みであるということを自覚してもらうつもりでやっています。それ以後、考える機会がないというわけではないですし、それまで何も考えたことがない人間が3年の夏休みに急に何かを考えつくわけでもないのですが、親との相談も含め、進路をじっくり考えるうえで、あるいは、考えたのち実際に具体的目的に向けて歩み始めるうえで、3年の夏休みが重要であるという気がしています。
 とはいえ、私が何か「正解」を持ち合わせているわけではなく、私はあくまでも考えるきっかけを与えるだけです。7月に入ると3年生には「第1回進路調査用紙」を配り、前期最終ゼミで提出してもらっています。打ち上げの日までに全員の用紙に目を通し、当日飲みながら、ゼミ生にいろいろな「牽制球」(場合によってはビーン・ボール)を投げつけるわけです。「脇の甘い」ゼミ生はそこでたじろぎます。たじろいでください。3年のこの時期、たじろがせるのが目的なのです。たじろいで、悩んで、自分で道を切り開いていってください。どこぞのお偉い先生方と違い、私には何のコネもありませんから。
 これもいつの頃からか、講義を受けてくれている一般の学生諸君にも、就職に関する資料を配ったりしています。たぶん、就職委員を何年か続けてやっていた頃からかな。3年の秋になってようやく「第1回就職ガイダンス」なんてのを開催しているところなので(今は7月には開催していると思います)、3・4年配当のアジア経済論だけではなく、1、2年生も受講してくれている世界経済論でも、講義レジュメ、資料に交え、時折こうした資料を配り、講義を始める前に簡単なコメントを加えています。
 今年も先日、配りました。当ページの掲示板でも話題になっていましたけどね(あの資料、ゴミ箱に捨ててたやつもおるのか!フー。合掌)。配ったのは、本学の今年の就職状況。フリーター問題を取り上げた記事。フリーター問題を取り巻く日本の労働市場の変化を解説した評論。
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 あのな、経済学部の進路決定率(卒業者に占める就職者・大学院進学者の割合)は、74.7%や(地域政策学部は72.8%)。そやから、「就職率100%」なんてのはまやかしやで。もちろん他大学と比べて悪いわけやない。MARCHあたりやと、7割切ってるところも多い。でも、4人に1人は進路未決定のまま卒業してるっちゅう「現実」は知っておけ。公務員試験受けます、院試受けます、卒業して就職活動をします、というやつもいるけど、そのままフリーターというやつもおる。フリーターが絶対にダメとは言わん。でもフリーターの「現実」は知っておけ。
 専門家の調査によると、現在フリーターは全国で推計450万人超。団塊世代のサラリーマンに匹敵する数や。正社員と生涯賃金を比べると四分の一にしかならん。住宅ローンはなかなか組めん。「フリーターの罠」は結構きつく、新卒時にフリーターやった人の5割以上はフリーターのまま。フリーターの高齢化が進んでるっちゅうわけや。フリーターの方が未婚率が高く、フリーターはフリーターと結婚する可能性が高い。こんな調査まであるんやで。ちょっとだけビックリした?人生観、職業観は様々。そして様々であってええ。でもフリーターの「現実」は知っておいた方がええ。もちろん、フリーターがここまで拡大しているのには、若者の意識の変化以上の「わけ」がある。「パラサイト・シングル」なんて、一面的見方や。世界的規模で工程分業が進んでるし、オフショアリングの問題もある。これが雇用の二極化を生み出してるんやろな。これが将来的にどういう問題をもたらすか。どんな対策を打てるか。これは、偉いさんが考えることかも知らんけど、君らは、こうしたマクロ的状況を認識したうえで、進路を考えた方がエエよ。君らぐらいの能力があれば、なりたくないならフリーターにならんですむと思うよ。なりたいっていうんやったら、別に止めんけどな。まあ、いろいろ考えといて。
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 こんな話しをするわけです。どれだけの人が「真に受ける」か分かりませんが、専任教員として、これぐらいの話まではしておこうということで、講義の本題に入る前、5分ほど話しをすることがあるのです。そして、あわせて、学生諸君にお勧めしておいたのが、「○×企業研究」や「面タツ」ならぬ以下の本。
◇斎藤孝『「できる人」はどこが違うのか』ちくま新書、2001年:
 「学ぶ」「身につける」「上達する」ということの意味と方法を知っておくのは大事。参考にしてくださいという意味で。
◇吉本康永『アホな就職で後悔させない法』三五館、2001年:
 「就職」にまつわる幻想を捨て、現実を見据えたうえ「進路」を模索するために、という趣旨で。
◇東京管理職ユニオン・日本労働弁護団編『会社をやめる父から会社に入る息子・娘たちへ』教育史料出版会、1994年:
 多少古くはなったけれど、リストラにあった人たちが何を考え、それまで仕事をし、リストラ後の歩みを始めたのかを知ることで、「働く」ということの意味が分かるのではないかという趣旨で。
◇玄田有史『仕事のなかの曖昧な不安』中央公論新社、2001年:
 日本の労働市場のマクロ的状況と若者のおかれている現状を知るためにという趣旨で。
◇日経産業新聞社編『市場占有率』(各年版)日本経済新聞社:
 最終消費財・サービス生産企業、財閥系企業のみならず、日本のいろいろな業界を見渡すための一資料として。
 村上龍の『13歳のハローワーク』も大変面白い本なのですが、読むのが大学生になってからでは多少遅いかなというのと、「自分が面白いと思う仕事をするのが一番」というコンセプトにやや違和感を感じるので、お薦め本からは外しました。自分が面白いと思う職業を探せ、これは様々な職業の内容、必要とされる能力、リスク等を紹介した本だよ、ということなのでしょうが、実際に携わる前に、仕事の面白さが分かるという発想そのものについていけないというか、事前に面白いと思える仕事にしか就かないことをよしとしているというのがちょっと違うんじゃないかという気がしています。世の中で働いている人で、昔思い描いていた、夢見ていたとおりの職業生活を送っている人がどれだけいるんでしょうか。その道に入るまでは、つまり事前には、特に面白いとも思えなかった職業に就いたけれど、やってみると面白かったとか、いや、面白いとか面白くないとか、そういうことではなく、とにもかくにも稼がなければならなかったとか、そんな人の方が多いように思えるのです。いずれにしても、仕事の面白さなんて「あとづけ」の部分が多いような気がします。夢や理想は大事でしょうが、それを実現させるのは並大抵では無理でしょう。地道な努力が必要でしょうし、努力したからといって思い通りにいくかどうかは分かりません。
 日々、自らの人生について真剣に考える、そして日々、努力もする。それを前提としながら、でも、「まずは働いてみる」ということも必要なのではないか。正解を持たないまま、それでも学生諸君に就職指導らしきことを手探りでやっている教員の「暫定的見解」は、まあ、こんなところですね。お役に立てずにすみません。
 
 




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