2005年 4月 27日(水)

それぞれの新年度

 新年度が始まり、ひと月近く経ちましたが、今年は新入生の履修相談が例年以上に多かったように思います。卒業要件のような技術的なものから、進路を意識した相談まで、いろいろでしたが、大学に入って、新鮮な気持ちで、とにかく頑張ろうという姿勢は伝わってきました。
 それぞれ個別に対応したわけですが、彼ら・彼女らに最初に言ったのは、「まあ、落ち着け」ということです。今は、何かたっぷりと時間があり、様々なことができる、何でもやる、と思っているかもしれないけど(そして、それは悪いことではないけれど)、手を伸ばしすぎないほうがいい。特に、「とりあえず」教職課程をとるという学生には釘を刺しておきました。
 親は邪魔にならないのだから取っておけと言う。本人もそうかなと思う。でも本来、教員免許は、教師になる人が持つべきものであって、何となく取得するものではありません。2年後期からは演習も始まり、専門科目の勉強も大変になってきます。就職活動にも差し障りが出てくるかもしれません。教員免許を持っているからといって就職に有利になることなどありません。また、教育実習生の受入は教育現場にとってはコスト以外の何ものでもありません。それでも受け入れるのは、本気で教員になる人にとって重要な実習を積ませるためです。「何となく」「とりあえず」組など、迷惑なだけです。
 こんな具合に、本人にとっても、社会にとっても、いい加減な気持ちで教職課程を履修するのはよくないと諭したわけです。でも何はともあれ、新鮮な気持ちで研究室にやってくる新入生と話をするのは、私にとっても貴重です。前向きなエネルギーに触れ、自分自身が活性化されるような気がしますし、専任教員としては、新入生がどんなことを考えているのか、具体的に触れる機会になるからです。新入生諸君には、今の気持ちを忘れずに、大学生活を謳歌してほしいと願います。専任教員はあなた方をバックアップするためにいます。「自己責任」など、専任教員の安易な逃げ口上。そんなことを口走る教員もいるのはたしかですが、そんな人ばかりではありません。気軽に研究室を訪ねてみてください。夢のお手伝いをできるかもしれませんし、悩みのはけ口になるかもしれません。
 さて、カリキュラムの大きな変更点。今年から基礎演習が始まります。演習が2年の後期からとなりますが、この募集方法がガラッと変わります。学生は一つのゼミしか応募できません。定員は18名(合同ゼミは9名)。教員の側も、応募者が18名以下の場合は、面接なしで全員受け入れます。一次募集で入れなかった人は、18名に満たないゼミに、二次募集で応募します。地域政策学部と似た選択システムになるわけですが、こうなると、一番問題になってくるのがミスマッチ。大学生活にとってきわめて重要な2年半のゼミが決まるわけですから、学生は様々な形で情報を集めなければなりません。教員サイドでも、ありとあらゆる機会を通じ、ゼミの情報を流す必要があります。今年は『ゼミナール案内』が見開き2ページとなりました(情報公開という意味では、相変わらず何の工夫もない教員もいますが)。おそらく熱心な教員は、ゼミ選択のための特別なオフィスアワーを設けるでしょうし、何回も公開ゼミを行なうでしょう。そうした教員、経済学部では着実に増えています。
 また今年から、履修登録が前期・後期の2回に分かれます。一応、全学年がセメスター制のもとにおかれる学生となったからです。
 私の担当科目。カリキュラムの都合上、講義科目はすべて午前中となりました。画期的でしょ?以前は二日酔いでも授業ができるように、とか言って、講義は午後に設定していましたから。
 まずは木曜1限(!)の開発経済論ですが、今年は拙著『可能性の政治経済学−ハーシュマン研究序説』を指定教科書にしました。学部学生にとって、けっして安くはない、そして、けっして読みやすくはないものですが、これを使って講義をします。自分の本を使うのは、初めてであり、どこか気恥ずかしいのですが、発展とか成長に関する自らの考え方を率直に学生に伝えていこうと思います。高価な教科書ですので、縦横無尽に活用したいと思います。
 木曜5限(例年どおり)は、演習�供�昨年と同じ事情により、前期は演習�気離汽屮璽澆塙臚韻任后�テキストはようやく翻訳された、アレクサンダー・ガーシェンクロンの『後発工業国の経済史』です。何となく名前は知っているし、よく言及もされるけど、読まれずに済まされている論者というのは、けっこういますが、ガーシェンクロンもその一人。「後発性の利益」の一言で済まされている人の本がせっかく翻訳されたので学生諸君と輪読していこうと思います。が、けっして、寝ながら読み流せる本ではありません。(翻訳の苦労は分かっていますが)訳文はけっして読みやすくはありませんし、扱っている内容も難しいものです。ただ、読みごたえのある論文集であることはたしかです。本学で言えば、Kゼミの学生諸君にも読んで欲しい本ですね。
 金曜2限は世界経済論�機�指定テキストは石見徹氏の『国際経済体制の再建から多極化へ』です。開発経済論と違って、安く、読みやすいテキストです。1年生から履修できる科目ですから。これまで長く、室井義雄氏の『南北・南南問題』を使ってきましたが、少しばかり目先を変えて、同じ山川出版の「世界史リブレット」シリーズから選んでみました。『可能性の政治経済学』は参考書扱いです。
 金曜5限は演習�機1藹��尭瑛諭�開講以来、同じ時間帯です。今年は14期生ですが、ゼミの内容としては、3期生以来続いている原書講読です。昨年は私の仕事に合わせる形で、ハーシュマンのExit, Voice, and Loyalty などという難解な英語に付き合わせてしまいましたが、今年は、Martin Khor, Rethinking Globalization: Critical Issues and Policy Choices, London and New York: Zed Books, 2001. という易しいテキストで、世界経済の現状について学びます。でも初回の小テストは悲惨な結果に終りました。
 基礎演習は後期の木曜4限となります。詳細は未定なのですが、社会科学の基本を扱っていると考えられるような新書を毎週1冊ずつ読んでいこうかなと思っています。
 授業について、私の新年度は以上のような感じです。ここでゼミ卒業生の新年度を一部紹介。
 ゼミ3期生で、ポシビリズム研究会ホームページの管理人であるS君。この4月から同志社大学商学部の講師となり、専任の教員として教壇に立っています。これまでも関西学院や阪南大学で教えていましたが、今回は専任。3年という有期ではありますが、給与も賞与もあり、研究費もある専任教員としての採用です。これを機会に、教育者としての実務経験を積むとともに、これまでの研究成果をまとめてくれることでしょう。『史学雑誌』の学界展望で毎年必ず言及されてきた彼の研究が1冊になれば、おそらくは大きな反響を呼ぶと思います。
 また7期生のK君は、経済的事情もあり、京都でのOD生活を断念し、実家を拠点として研究を続けることになりました。その傍ら、高崎経済大学経済学部の「論文の読み方・書き方」という科目(第二外国語と同列の選択科目)の非常勤講師として、教壇に立ちます。教職免許もあり、塾・予備校での講師経験も長い彼なら、きっと後輩たちの心に響く授業を展開してくれることでしょう。彼のこだわりにぴったりの科目ですが、自分の論文を書き続けることも忘れずに。
 それぞれの新年度。新しい環境で、みんな、頑張っています。




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