2003/11/27 (Thu)

腕時計



 お客様からカルティエの腕時計を預かった。

 ずっと大切にしてきたものらしいけど、大阪へ転勤された為、次に会うまで私の腕へとそれは収まった。



 男の人の香水の沁み込んだ時計。

 優しい人で、お会いする度頭を撫でてくれる。その安心感を、時計に沁み込んだ匂いで思い出しながら働いた日。
 Sさんはお見えにならないし、メールの返信も満足にしていただけない。お忙しいのか愛想が尽きたのか…量り知る術はない。

 只、ここにあるのは苦しさだけ。

 閉店間際、いつものようにメリージェーンが流れて…隣に立っていた希ちゃんがふと呟いた。
 『この曲がすっごく切なかった事が一度だけあった』と。



 別れ難さ。誰の人生にも一度や二度、必ず現れる切ない想いの欠片。