2003/9/28 (Sun)

悔し泣き。

 
 
 それは通りがかりに気に入って黎紗を指名してきたお客さんだった。

 今日はビール(中)一杯とファジーネーブル。焼酎ロック(客の)を呑んで、その席でもまたファジーネーブルを頂いたから、少し気分が酔いに向かっていたのかもしれない。
 慧子さんという人と一緒に付いたお席で、私は半分1セットで外して頂いてもいいくらいの気分でいた。慧子さんは恐らく水の経験があり、とてもしっかりしていてこの人と席に付くときは安心して居られる人だった為だ。

 そのお客さんは付くなり慧子さんの事も私の事も「なんか違うなぁ」そう言った。
  
 違うならそれでいい、普段ならそれで終わる。それはこの仕事の中ではよくあることでコンビニやファーストフードの店員と違う現象の一つ。「お客さんに好みがある」ということ。
 好みじゃない女の子のレジでもコンビニなら並ぶけど、呑み屋はそういう訳にはいかない。それはコンビニでわざわざ嫌いな食べ物を購入しないのと同じこと。それは結構よくあることだったからそれはそれでよかったんだ。

 でもそのお客さんは違ってた。

 そのお客様は、私という人間を理解したような発言をする人だった。「片親だろう」とか「でも気位だけは高そうだ」とか…。その人から見た私の印象を図り知ることは出来ない。ただ、見下されている気がしたから酷く嫌な気分になった。
 人間、わかりきって居る事を他人に説明されると苛々する事がある。まさにその状態だったのかもしれない。

 その人は私に「寿司を食べに行こう」そう言った。「回ってるやつだけどいい?」と。私は一見の得体の知れない人と約束を交わすのは極力避けたかったから「回ってないやつがいい」そう言った。
 相手は「こいつは要らんは。」私に向かってそう言った。

 「俺は約束を守れない人間は嫌いなんだ。」そんなの誰だってそうに決まっている。だからこそ、私はお客様と一度約束を交わしたら必ず守って来たし、これからもそうするつもりでいた。だからこの人がじゃあ回ってないやつにしよう、と言ったら私はその時点で時間を作っただろう。
 それは今までも多少無理をしてちゃんと時間を作って来たから誓って言える。Nも一見のお客様だったけど、約束を交わした以上は、ちゃんと時間を作らせてもらった。

 "ホステスは嘘を付く"そんなレッテルを貼られても心外だ。

 早い話が「女」としての部分を否定されるのではなく「人間」として否定された気がした。私は机の上の名刺をポーチにしまい、そして相当怖い表情をしていたらしい。

 この仕事の中で…人間として見下された気がしたこと、それは初めての経験だった。女として傷つけられる事は多々ある。でもそれならまだ耐えられた。「気位が高い」そのお客さんは私を見てそう言ったけど、その通りご名答。
 でも、"お客様"に対してそういう態度を取ってしまった自分というものが、一番情けなかった。。
 少し落ち着いてから、私はいい勉強をさせて頂いた事に態度を改めてお礼をいい、その席を立って待機に戻った。


 希ちゃんに待機でその時の話を聞いてもらいながら、私は初めて職場で泣いた。

 でもこれで二度と、こんなみっともない事はしなくて済むと思う。いい勉強をさせてもらった。もうきっと二度と付くことはない、店でお会いするのはそんなお客様が多い。



 次は無いのだと日々噛み締めて居なければ、繰り返してしまいがちな失敗談。