| 2003/9/30 (Tue) |
退店。
オープンの日、バスに揺られながら一人とても不安だった。
二つの人生を生きてゆくことになる、そんな覚悟とか…きっと肌で感じていた。
だけど、現実は想像よりも厳しくて当たり前なもの。名刺の渡し方、お酒のつくり方、初めて会う人と会話を弾ませるということ…難しいことだらけの毎日だった。
お客様に誘われることもしばしばで、私は上手な断り方も解らずにいた。
そんな頃に、送迎が一緒になり、相談にのってくれたのが絵璃子さんだった。
「お客さんにご飯食べに行こうとかすごい誘われるんですけど、どうやって交わしていいかわからなくて。」
そう言った私に絵璃子さんはこんな言葉をくれた。
『ホステスやっとるとね、軽い女だと思われがちなんよ。でもね、実際はそうじゃないが?だからね、昼も働いとるから時間がないってちゃんと言えばいいんよ。この場所で働いとるのにはそれぞれ訳があるんじゃからね。それをちゃんと話して、今は仕事を大事にしたいって言ったらいいんよ。それでも付いてきてくれる人はちゃんと付いてきてくれるから。でもね、そうしていく中で本当に信用できて、深い話も出来るようになったような方に会えたときは出かけてもええんじゃないかね。私にも、いまだにそうやって気持ちを通わせる話が出来て、時々ご飯を食べたりする人はおるしね。』
そして一瞬びっくりするような優しい表情で「がんばろうね」そう言ってくれた。
それから、私の中でその人は特別な存在になった。
いつも姿勢をただし、すれ違う時はいつも笑顔で挨拶をしてくれる人。初めて絵璃子さんと話したのはオープンの日だった。
ヘルプに付いた席に残っていた寿司折を「これ食べれる?」と聞かれたのだ。「せっかく頼んでくれたからね、残したら勿体無いから。」見た目の印象だけだとかなりキツイ女性なのかと誤解をさせる人。
その台詞の本当の重要さを私が知るのは、もっともっと後のことだったけれど、仕事に対する姿勢の厳しい人。
あまりお話する機会はもてなかったけど…私は絵璃子さんが大好きだった。
その絵璃子さんが、今日付けで退店される事となった。
それを聞いたのは、しばらく前で絵璃子さんが引き合わせて下さったお客様が、私と絵璃子さんをW指名して下さったときの事だった。
その日は本当にショックで、泣き出しそうな気持ちで働いてた。。
花束も、プレゼントも何も出来なかったけれど、最後に握手だけしてもらえた。
「がんばってね。」
その笑顔は「がんばろうね。」といってくれた日の笑顔と何も変わらないものだった。
尊敬に値する人。多分彼女を見れば誰しもそれに頷くはず。絵璃子さんみたいに、常に姿勢を正していられるように…私もなりたい。
絵璃子さんに会えてよかった。