| 2003年 10月 14日(火) |
集中豪雨
朝から湿気が多く、蒸し暑くてヘンな天気だと思っていたが、昼過ぎから雨が降り出し、5時間目が終わるころにはものすごい集中豪雨になった。
窓ガラスは、叩きつけるように降る雨でひっきりなしにバチバチ鳴っているし、上階の教室では、雨が天井を叩く音が、太鼓を叩く音のようにさえ聞こえたという。
生徒会室のお気に入りの窓に陣取って校庭を眺めていると、真昼間だというのに夕方のように暗くなっていて、おまけに雨のしぶきで景色全体が白く霞んで見える。
さすがにこの天気では、体育の授業も体育館に変更だろうとぼんやり思ってると、誰だか浮かれ者が校庭を走り回っている。
………慎吾だ。
ぶち当たる雨に全身ずぶぬれなんて生易しい表現じゃ足りないくらい濡れそぼった彼は、何をしているのかと思ったら、テニス部が貼りっぱなしにしてあったネットを必死に片付けているのだ。
そんなことはテニス部の連中にやらせればいいじゃないか。
私は呆れて窓を開けた。開けた途端、無数の跳ね上がった水しぶきが襲い掛かってきて、たちまち室内にいるはずの私もじっとりとぬれてしまう。
「慎吾!」
必死の叫び声も雨の音にかき消されて届くかどうか。だが、慎吾はゆっくり顔を上げた。
「何やってるんだ! 早く部屋に入りなよ!」
「ああ、ええねんええねん、どうせもうずくずくやねんから。」
慎吾は雨粒に叩かれて、イテイテイテと呟きながら見るからに楽しそうに笑う。慎吾の全身から跳ね返る水は真っ白にけぶって、なんだか慎吾を神秘のベールで包んでいるみたいだ。
「それより、窓閉めとき。俺の大事なお姫様が雨にぬれたらえらいこっちゃで。」
お姫様だなんて。からかわれているのに、私の胸がきゅっと縮み上がった。まったくしょうがないヤンチャ坊主なんだから。私は言われたとおり窓を閉め、流れる水滴に目を凝らしつつ、雨と戯れる慎吾を見守った。ネットの片づけが終わっても、慎吾はずいぶん長いこと校庭で走り回っていた。よっぽどあの雨が気に入ったらしい。
雨に慎吾を採られてちょっと癪だったけど、また慎吾の可愛いいちめんを発見できてしまった。なんだか得した気分だ。
これで慎吾が風邪を引かなきゃ完璧なんだけどな。