2003年 11月 11日(火)

なんですと!

長身組にも衣装をあてがってやったおかげといおうかなんと言おうか、雪紀がやけくそのように張り切りだした。
「衣装は全部特注だ! 靴、ヘッドレスト、その他小道具も全部作るぞ! もちろん俺たちの分もだ!」
そんなに作っている時間があるのだろうか。もっとも雪紀のことだから、言い出した以上はシャカリキになって手配するのに違いない。私としては大して乗り気でなかったとはいえ、どうせコスプレするのなら誰よりも美しくありたいと思うし、またそれが当然であると思うので、すべて誂えた衣装で完璧に決めるのはやぶさかでない。
それに怪我の功名もあった。祥太郎先生のご機嫌が回復しつつあるのだ。
「靴まで誂えるんだったら、これが終わったらもらってもいいのかな。」
ちょっと上目遣いに雪紀や直哉にお願い─あれはほとんどおねだりだが─している。
「僕、足がちっちゃくて、合う靴を見つけるのが大変なんだ。これ引き取れたら嬉しいなあ。」
ミニマムな祥太郎先生はやっぱり足もミニマムらしい。雪紀は鷹揚に頷いた。
「いいですよ。差し上げましょう。その代わり、学園祭ではよろしくお願いいたしますね。」
祥太郎先生はそれでもためらいがちだったが、やっと頷いた。靴1足で貴重な人材をがっちり確保できたのだ。雪紀には安い買い物だったろう。
それにしても祥太郎先生は、少女向きのつま先の丸いあの編み上げブーツを、普段に履くつもりなのだろうか。

買い物で思いついたのだが、喫茶というわりには雪紀はぜんぜん飲食物の話をしない。どうなっているのか恐る恐る聞いてみると、
「茶だけティー研に出してもらう。後は当然ケータリングだ! われわれが作っている暇も腕もないだろう!」
なるほど、そのためのティータイム研究会か。だが、そんな経費のかかる商売で、本当に上がりがあるのだろうか。しまり屋の瑞樹ならずとも気になるところだ。それも聞いてみると、不敵な笑いが帰ってくるばかり。
私は嫌な予感を覚えて、最近雪紀がしょっちゅう抱えているファイルを覗いてみた。すると、ゴスロリ喫茶のメニューがある。普通の白い奴と、ゴールドの奴だ。このゴールドは胡散臭すぎる。
中を開けてみると、………なんと、お好みのゴスロリ少年をお選びくださいとある欄には、

    ★お膝に抱っこ(あなたのお膝の上でおしゃべりしましょう。)
    ★スプーンであーん(至近距離でご注文のお品物を食べさせて差し上げます)
    ★一緒にパチリ(記念撮影です。ゴスロリ少年がさまざまなポーズをとってくれます)

な、な、なんなんだこれは! こんなことを私たちの了承も取らずに通そうとしているのか、あいつは!
しかも、斜線で消してはあるが、この、★ほっぺにちゅっ♪てのはなんだ!!!
ここまで書いた段階で、咲良が指名される可能性に初めて気付いたのだな! あのお調子者は!
こんなこと、こんなことが許されるのか! 私の唇は慎吾以外には捧げないんだぞ!
珍しくこの私が動揺しまくってしまった。一体どうしてくれよう…。