2003年 9月 30日(火)

秘密の時間

 ようやく、運動会が終わった。慎吾は本当に格好良くて、私はますますそんな慎吾にメロメロだ。
けれど、物事には必ず終わりがあるものだ。運動会はつつがなく終わり、校内もようやく静かになった。
中間テストが近づきつつある今、一部の生徒以外は必死で机にしがみ付いているだろう。
と、私は退屈な授業を聞きながらふいに慎吾の事を思った。・・・慎吾は絶対、必ず、その「一部」の生徒に入るはずだ。
 
 「先生。少し気分が悪いので・・・保健室に行ってもよろしいでしょうか・・・?」
 
 私は少し俯き加減に、年配の社会化教師にそう告げた。もちろん教師は二つ返事で承諾をくれた。
あちらこちらから「大丈夫ですか?」という声が上がるが、微かに微笑んで「・・・大丈夫だから・・・」と私が言えば皆はうっとりとして黙ってくれた。
・・・今、とてもいい事を思いついたのに、邪魔されてたまるか・・・。


 私にしては珍しく、かなり足早に校舎の中を歩いて、辿り着いたそこは・・・。
 からり、と静かにドアを開ければやっぱり・・・。
 生徒会室の、そう大きくはないソファーの上で、慎吾は幸せそうに眠っていた。
連日連夜、体育祭のために奔走していた慎吾が疲れていないわけはない。・・・でも、生徒会の一員として規律を守らないのはどうかと思うが・・・。
この際、そんな事は知らないふりをして・・・。
 
 「慎吾・・・・・・・・・・」

 私は小さくその名前を呼ぶと、少し開き加減のその唇にキスをした。

 「ん・・・・・、天・・・音?」

 キスの気配で目が覚めたのか、寝起きのかすれた声で慎吾が私の名前を呼ぶ。
 「おはよう、慎吾。・・・もうすぐテストなのに、こんな所で寝ているなんて・・・。どうなっても知りませんよ・・・?」
 クスクス笑いながらそういうと、慎吾はソファーに寝転んだまま私の体を抱き寄せた。

 「今は・・・テストなんかより天音とこうしてる方が、ええねん・・・」
 
 そう言いながら少しずつ慎吾の瞼が閉ざされていき、幸せそうな顔のまま、再び眠ってしまった。
 私は少し窮屈な体勢で抱きしめられたまま、身動きする事が叶わなくなってしまったが、何だかとても気分がいい。

 それに、慎吾がテスト勉強も何にもしなければそれを口実にまた「お泊り」をさせる事だって可能なのだ。
 
 この幸せな「秘密の時間」は私の、生涯の宝物になるだろう予感がした。