2004年 1月 20日(火)

騎士登場?!

 昨日、雪紀に持ちかけられた取引に応じる事に気が進まないまま私は登校した。腕時計をみれば遅刻スレスレだった。
 いつもならもう少し早い時間に私は登校するのだが、昨日の雪紀との取引が嫌でぐずぐずしていてこんな時間になってしまった。 
 登校してまず思ったのが、学内の空気が違うと言う事だった。

 普段なら何となくのんびりした空気が漂っているのだが・・・。まぁ、これは良家の子息が多いので仕方の無い事だが・・・。
 今日に限ってはどことなくぴりぴりした空気が漂っているのが私には不穏に感じられた。
 しかし、とりあえず何も無く午前の授業を終えて・・・雪紀の待つ生徒会室へと向かう事にした。
 昨日の取引の答えを、今日の昼休みに答える約束になっていたからだ。
 けれど私の中で答えは未だに出ていない。


 「天音、ちゃんと昼飯喰わなあかんやないか?」
 生徒会室へと急いだ私は途中で慎吾に捕まってしまった。どうやら私の教室で、私が昼食も取らずに出て来たのを聞きつけてきたらしい。
 
 「・・・・・慎吾。済みませんが今、貴方に捕まっている暇はないんです」
 「天音〜、なんでそんなにつれない事言うんや〜?」
 
 まるで飼い主に叱られた犬が耳としっぽを丸めたような・・・そんな情けなさが慎吾からかもし出されている。
 一体、誰のせいで雪紀に取引を持ちかけられたと思っているのですか?!と言ってしまいそうになるのを私はこらえる。

 「雪紀と生徒会室で約束があるんです。昼ご飯なんて悠長な事を言ってられないんですよ?私は」
 「でもなぁ・・・俺かて、午前中ずっと天音に会いたいのを我慢しとったんやけど・・・」
 私より余程大きな慎吾が何故か小さく見えてしまう。
 「仕方ないですね。私と雪紀の邪魔をしないのでしたら、着いて来てもいいですよ・・・?」

 私の答えに満面の笑みを浮かべた慎吾だった。


 約束の時間に少し遅れて生徒会室に行くと雪紀は既に来ていた。会長の机に向かい何やら書類とにらめっこしている。
 こうしていれば有能な生徒会長なのだが・・・いかんせん、性格に難あり、といった所だろうか。
 
 「遅くなってしまいました。待ちましたか?」
 
 「あ、天音先輩だ〜♪」
 「慎吾さんもいる〜」
 慎吾を従えて生徒会室に入れば、入り口から死角になっている部屋の隅に子犬コンビがいたのだ。

 不思議に思い雪紀を見れば、非常につまらなそうな顔をして私を見ている。「一体何が・・・?」と機構と思ったとき、子犬コンビが矢継ぎ早に話し掛けてきた。

 「ねえねえ、天音先輩〜。今朝の話聞きましたか〜?
 「直哉さん、凄いんですよ♪」
 「そうですよ〜、祥太郎先生を助けちゃったんですよ〜」
 「思いっ切り格好良かったよな、直哉さん♪」
 
 きゃっきゃ、きゃっきゃとまるで女子高生のようなノリで興奮している。
 
 「・・・雪紀?」
 呆気に取られた私は雪紀に説明を求める。
 
 「まったく・・・。折角の天音との取引がパァだよ。直哉の奴、俺達が何もしなくても恐らく今度のコンテスト1位だぞ・・・?」
 「・・・・・は・・・・・・?」
 「今朝、祥太郎先生の・・・服を脱がせようと、襲い掛かった馬鹿がいたんだよ・・・。ほら、あの慎吾の流した噂があっただろう?それを信じた奴らが面白がって、寄ってたかって先生を・・・。そうしたらたまたま偶然!直哉が通りかかってそいつらをぼこぼこにしたそうだ。偶然居合わせた生徒の話では、直哉はそれは格好良かったらしいぞ?まるで騎士のようだったと言い出す生徒もいたそうだ。そして、当の祥太郎先生も・・・うるうるした瞳で直哉をみていたらしい・・・」


 成る程。今朝、校内の空気がおかしかったのはそのせいだったのか。私は納得した。
 それにしても、ありがたい馬鹿がいたものだ。私と雪紀の取引の内容をチャラにしてくれて・・・感謝感激だ。
 後は・・・・・この噂をせいぜい利用して、直哉が1位になるように徹底すればいい・・・かも知れない。