| 2004年 1月 25日(日) |
思い出すと・・・・・・・・
週末はいつも慎吾が泊まりに来るのだが、今週は寮で篭っているらしい。
それというのも、昨日の「歯医者」が堪えたらしい。
今思い出しても・・・・・笑いが止まらないというか、気の毒というか・・・・
「いやや〜〜〜〜〜〜っ行きたない〜〜〜〜〜〜〜っ」
「なに言ってるんですか、そんなに顔を腫らして!早く入りなさい!!」
私は歯科医院のドアにしがみ付いている慎吾の腕を引っ張った。
しかし、なんせ筋肉の固まりの慎吾の身体は、私が引っ張ったくらいでは動じない。
私はため息を吐くと、腕を解放し慎吾に冷たい視線を送った。
「慎吾・・・・・私はそんな顔の男とはキスもしたくないし、一緒に居るのも嫌です。治療が嫌なら、私は慎吾と別れるしかないですね・・・」
「えっ・・・・・・」
私の口から「別れる」という言葉が出た瞬間、慎吾の表情が一気に青ざめた。
「それにそんな肝っ玉の小さい男も嫌いです」
追い討ちをかけるように言うと、慎吾はドアから手を離した。
「行って来ます・・・・・・・」
しょんぼりと項垂れて、慎吾はスゴスゴと病院の中に入っていった。
待合室で待っている間も、診察室から漏れ聞こえる機械の音に、慎吾は反応し、びくびくと身体を震わせていた。
その怯えた姿は可愛くもあるが、情けないとも思う。
10分程待たされ、最初に慎吾が呼ばれた。
「うわっ・・・・来た!!」
そう呟くが慎吾は立ち上がる気配を見せない。
「慎吾・・・・呼ばれてますよ・・・・ほら」
私が慎吾の肩を叩いて、促すと、慎吾は潤んだ瞳で私を見た。
「天音〜付いてきて・・・・・・」
「無理です。ほら、早く行きなさい・・・・」
背中を叩くと、慎吾は恨めしい顔をしたまま、診察室へと消えていった・・・・・・
一緒に来ていた咲良は慎吾より先に診察室に入り、クリーニングをしてもらっている。
待合室には私だけしか居ない。
暇つぶしに文庫本を取り出し、数ページ読んだところで、咲良が笑いながら戻ってきた。
「どうしました?そんなに笑って・・・・」
「あ、天音先輩・・・・笑わずにはいられませんよぉ〜〜〜〜」
「そんなに面白いことがあったんですか?」
「慎吾先輩・・・・・・麻酔の注射された瞬間、泣き出して、看護婦さんに『あらあら・・・泣いちゃった・・・恐くないわよ〜』ってタオルで涙を拭いてもらってるんですよ〜」
「泣いた・・・・・?」
「もう、幼児扱いですよ、あれは。あんまり泣くので、先生に『男の子だろ?泣くんじゃない!!』って怒られてました」
「・・・・・・・・・・」
男の子って・・・・先生・・・そんな・・・
咲良はその状況を思い出したのか、涙を流して笑っている。
私があきれ返っていると、慎吾が診察室から出てきた。
「慎吾・・・・・・」
泣いて疲れ果てたのか、その姿は普段の慎吾より二周りは小さく見えた。
麻酔の効いている唇は締りが無く、よだれが垂れてしまっている。
「まったく・・・・世話のかかる・・・・」
私はハンカチを取り出し、慎吾の口をぬぐってやった。
そんな私たちを見て、咲良は更に笑い出した。
「慎吾先輩カッコ悪〜〜〜〜い」
咲良のその言葉にムッとしないでもないが、確かにかっこ悪い。
でも・・・・かっこ悪くても私の慎吾に対する愛は変わらない。
そんなかっこ悪い慎吾も可愛いと思ってしまう私は少し変だろうか?