2004年 1月 26日(月)

覚えておきなさい・・・

 やられた。これが、今日の私の正直な気持だった。
 咲良が一緒で、昨日の慎吾の醜態がばらされない訳がなかったのだ。
 一応、咲良なりに気は使ってくれたのだろう。寮の中でばらした訳でもなく、校内に吹聴して歩いた訳でもない。

 しかし、よりにもよってこんな所で・・・と私が頭を抱えたのは言うまでも無い。

 つい今しがた、私が遅れて(他に仕事があったので)生徒会室に来たら・・・慎吾が思い切り不貞腐れていた。
 そして。
 雪紀が、涙を流して笑っているではないか!!!まさか、と思い直哉を見れば笑いたいのに笑えないと言った様子で頬が引きつっているではないか。
まぁ、祥太郎先生が居るのでは笑うわけにはいかないだろう。

 今でも涙を流して、肩で息をしている雪紀を祥太郎先生は頬をぷくりと膨らませて睨んでいる。

 私が部屋に入って来たのに気が付いた咲良が恐る恐る私に近寄ってくる。

 「天音さん〜、ごめんなさい・・・。ほんの出来心だったんです。なのに雪紀さんったら思い切り笑っちゃうから・・・慎吾さん、すねちゃいましたぁ〜」
 咲良も半分涙声だ。
 それはそうだろう。素直な咲良の事だ、てっきり私が怒ると思って内心怯えているに違いない。
 そんな咲良に私は優しく言ってやる。

 「いいですよ、咲良。そんなに怖がらないでくださいね?私は、昨日の事を喋った咲良に怒ったりはしませんよ。確かに、あの慎吾は情けなかったのですから。でも・・・あそこまであからさまに笑われると、恋人の私としましても非常に不愉快なんですよねぇ・・・。ねぇ、雪紀?」

 私がにっこりと笑ってそう言いきった瞬間。生徒会室全体が凍ってしまったかのようになってしまった。
 ええ、もちろんわざとですとも。意識してやったに決まっているじゃないですか・・・。

 たかだか雪紀ごときが、咲良が可愛いばっかりにあんな事やこんな事をしてしまうような男が、この私の慎吾を涙を流しながら笑うなんて誰が許すのでしょうか。

 「あ・・・・・あまね・・・さん?」
 隣で咲良がわたわたしているのを無視して、私は雪紀の側までことさらゆっくりと歩いて行くと流石の雪紀も会長の椅子から腰を浮かせて逃げる体勢に入った。
 その肩を私はそっと押し戻す。

 「雪紀・・・よくも、慎吾を笑いましたね・・・?咲良は許せても、私は貴方を許せるほど心の広い人間じゃないんですよ?きっちり、このお礼はさせて頂きますよ?」
 雪紀の耳もとで囁くようにそう言ってやる。もちろんこれは、他の人間に私の言葉を聞かれないためと、雪紀に対するほんのささやかな嫌がらせを含んでいるのだが。

 さっ、と雪紀の顔色が変わったのを見て私は満足した。これで暫くは退屈しないで済みそうだ、と思うと昨日の慎吾に感謝の気持すら覚えてしまう。

 「慎吾・・・・?」
 固まったまま動かないみんなの間を縫って私は慎吾の所へと行くとそっと慎吾の名前を呼ぶ。
 「さぁ、今日はもう帰りましょう。大丈夫です・・・私が、慎吾を慰めてあげますから」
 笑顔でそう言うと、拗ねていた慎吾の表情がぱっと、明るくなる。
 
 本当に幼児並ですね、と思いながらもそんな慎吾も愛しいのだな、と私は再発見した。