| 2004年 1月 29日(木) |
不安要素
早速放課後に、祥太郎先生、慎吾、咲良、瑞樹を集めて、実力の程を見る事にした。
グランドを軽く一周してもらいタイムを計る。
まずは問題のない慎吾。
流石スポーツ特待生、問題ないタイムだ。
「どうや。俺の走りを見て惚れ直したんちゃうん?」
ストップウォッチを見つめる私に駆け寄り、慎吾が自慢気に言う。
「そうですね・・・・まあまあってとこでしょう・・・・」
今ここで褒めちぎると、慎吾は図に乗って自分を過信してしまうかもしれない。
とりあえず適当に慎吾をかわし、次に祥太郎先生に走ってもらった。
祥太郎先生の走りを見て、私は少し驚いた。
普段のボンヤリした顔とは違い、目つきがキリリとしていた。
漫画で表現したら、きっと瞳の中に「炎」を書かれるだろう。
そして、小さい身体のどこにパワーを隠していたのか、軽快な走りを見せてくれた。
「おや・・・・・・」
タイムを見た私は思わず呟いてしまった。
慎吾までとはいかないが、それなりのタイムだったのだ。
「久しぶりの運動で、息が上がっちゃったよぉ・・・・」
頬を上気させ、にっこり笑ってみせる祥太郎先生は、とても愛らしく、きっと直哉が見たら鼻血を出すに違いない。
次に咲良のタイムを計った。
もともと活発な咲良も、難なく一周走り、私を安心させる記録を残してくれた。
そして・・・・残った一人、瑞樹を見ると、何やら表情が硬い。
「瑞樹?どうしました?」
「あの・・・・俺、運動苦手なんですよ・・・・・」
そう言って私を見上げる瑞樹の目には、薄っすらと涙が・・・・・・
「大丈夫ですよ・・・・例え瑞樹が足が遅くても、他の皆がそこそこ早いですから・・・ね?」
私は瑞樹を励ますと、走ってみせるように促した。
暫く考えこんでいた瑞樹は、みんなの視線に押されるように、走り出した。
「加納くん!頑張れ!!」
必死に走る瑞樹に、これまた必死に、祥太郎先生が腕をブンブン振り回して声援を送っている。
そんな祥太郎先生の声援に応えようと必死に瑞樹は走るが、見た目にも遅いのが分かってしまうくらいだ。
グラウンドをたった一周しただけなのに、瑞樹はヨロヨロとゴールする。
「瑞樹大丈夫〜〜〜?」
倒れこんだ瑞樹に駆け寄り、咲良が瑞樹の身体を支えてやる。
瑞樹は息を喘がせ、返事も出来ないらしい。
タイムは・・・・・見なくても分かっている。
これはお話にならないくらい遅い。
私は考える。
走る順番をなんとか上手くすれば、瑞樹の遅さはカバーできるのだろうか・・・・・
どうしたものかと頭を巡らせていると、咲良に支えられた瑞樹が、私の側にやってきた。
「ご・・・ごめんなさい・・・俺・・・・」
子犬たちは私をウルウルした目で見上げている。
咲良の瑞樹を庇うような態度に、私の顔が綻ぶ。
こんな可愛い子達に、厳しいことは言えない・・・・・・・・
「大丈夫ですって。瑞樹が遅い分、慎吾が何とかしてくれますから。ね?慎吾」
「えっ?俺?」
突然話を振られて、慎吾が焦っている。
元はといえば、慎吾が原因でこんなことになったのだから、慎吾が何とかしなくて誰がやるというのか!!
「慎吾・・・・いいですか?勝ったあかつきには、最高のプレゼントを私から上げますよ・・・・それが欲しかったら、頑張ってくださいね」
慎吾の前に立ち、頬に手を添えて艶然と微笑んで見せると、慎吾がゴクンと唾を飲み込んだ。
「おお〜流石天音先輩・・・・扱いなれてる・・・・」
子犬たちが私の後ろで呟いた。
実力を測ったとこで、早速練習に入ろうと思い、前日に組んだ練習メニューを取りに行く為に振り返って、私は目を瞠った。
いつの間にか私たちの周りには、沢山の人垣が出来ていたのだ。
良くも悪くも目立っている生徒会の人間が、グラウンドで何かやっていると、噂が周り、みんな集まってきたのだろうか。
いや、あの「抱かれたい男実行委員」が触れ回ったのかもしれない。
こうして、「生徒会ガチンコマラソン勝負」は全校生徒の注目を集めることになった・・・・・・