2004年 1月 6日(火)

バーゲン

慎吾がコートを見に行きたいと言うのでついて行った。

いまや年頭のバーゲン真っ盛り。どの店もなんだか殺気立っている。
紳士服の方が婦人服よりは多少はましだと思うのは、私だけだろうか。
私はつくづく人ごみには向いていない。両手に紙袋を鈴なりにぶら下げてのし歩くご婦人方を見るたびにそう思う。

慎吾はこのお正月に、実家と金沢の田舎に行って、懐が暖かくなってきたのだそうだ。
とはいえ、つましい慎吾のこと、覗いて歩くのはジーンズメイトだの、若者向けの廉価な店ばかりだ。
私は慎吾には、私の隣を歩くにふさわしい服装をして欲しい。

通りがかったアクアスキュータムの店先で、長身の慎吾に似合いそうな、スマートなダッフルコートを見つけた。
カシミヤで、軽くて暖かそうだ。色もいい。薄めのキャメルは、隣に立つ私の肌の白さに合うだろう。
値段は13万円と少し高めだ。おそらく、慎吾の予算には見合わないだろう。
だが、私はやはり、どうせ買うならこのくらいのクラスのものを着て欲しい。
白鳳高校の制服のコートもおしゃれで可愛いが、どこにでも制服のコートを着ていけるわけではないのだ。
慎吾の方を伺い見ると、店の名前を見ただけでもうまったく検討する気もないようで、うつろな顔をしている。

お年始に、私がプレゼントするのはどうだろう…。
とてもいい考えに思えた。

だが、ふらふらと行きかける慎吾を捕まえてそう言うと、思いがけず怒気を孕んだ声が返ってきた。

「あんな、俺は今でも、おまえんちに入り浸って、しょっちゅう飯食わしてもらってるんやで。
こんな高価なコートまで買うてもろたら、俺まったくのヒモやん。」

私ははっと我に帰り、思わず反省し、そうして嬉しく思った。
慎吾は私と対等でいたいのだ。
それはつまり、ずっと私と歩んでいきたいと言うことなのだろう。
どちらかがどちらかにぶら下がっている関係では、じき終わりは見えてしまうのだ。
私が慎吾に抱く気持ちと慎吾が私を思う気持ちがぴったり重なったようで、…嬉しい発見をした一時だった。


ところで、コートはダメでも、わたしに食事を奢らせることには抵抗を感じないのかな、この筋肉は…。