2004年 1月 7日(水)

七草

今日起きて支度しながらニュースを観ていたら、「七草」の日と言っていた。
日々の忙しさのせいで、すっかり忘れていたが、古くからの風習に触れてみるのも良いかもしれない。

 私は早速祖母に言ってみた。

 「おばあさま、今日は七草の日ですね・・・・」

 「まぁ、天音さん忘れていたの?今日は七草粥を作りますから、慎吾さんを呼んでみたら?って一昨日言いましたでしょ?」

 祖母はクスクス笑いながら私を嗜める。
そう言われてみれば、そんな話を聞いたような気もしないでもない。
しかし、私は慎吾との蜜月のような毎日のせいで、祖母の話はすっかり忘れていたのだ。

 「ちゃんと慎吾さんを連れてくるのですよ、それを見越して沢山七草粥を作るのですから」

 「はい。分かりました。おばあさまの美味しい七草粥を、残すのはもったいないですからね」

私は笑顔で返事をすると、学校へと向かった。



 「・・・という訳で、慎吾。今日は私の家に来てくださいね」

生徒会室で慎吾を捕まえて、今朝のことを話した。

 「それはかまへんで、けど・・・七草粥ってなんや?うまいんか?」

 「そんなに美味しいって程の物でもないですけど・・・・縁起物みたいなもんですよ」

七草粥を知らない慎吾に苦笑いで応えると、側で聞き耳を立てていた子犬たちが食いついてきた。

 「天音先輩、七草粥ってなに?」
 「俺も食べたこと無い・・・・食べたいなぁ・・・・・・・」

帰国子女の咲良は知らないようで、首を傾げているし、瑞樹は指を咥えて羨ましそうな顔で私を見つめている。

 「あなた達も食べたいですか?」

 「食べたい!!食べたい!!」

子犬たちは目をキラキラさせて私に纏わりついてくる。

こんなに可愛く縋られると、私としても無碍にはできない。
私はこの子犬たちを意外と気に入っているから・・・・・

それに、この愛らしい二人を連れて行ったら、祖母も喜ぶかもしれない。
あの人は若い子が好きだから。

 「じゃあ、咲良と瑞樹も一緒にどうぞ・・・・」

私がそう言ったのを聞いて、慎吾が少し拗ねた口調で割り込んできた。

 「えー・・・お前らが来たら、俺の食う分が少なくなるやろ・・・・」


慎吾の拗ねている理由に、私は納得がいかない。
普通なら私と二人っきりになれないとか、そういう理由で拗ねるもんじゃ・・・・

 「咲良、瑞樹、あんな食い意地のはった男は置いて、さっさと行きましょう」

拗ねている慎吾を無視して、私が咲良と瑞樹を両脇に従えて歩き出すと、慎吾が誤りながらついてくるのだった。


帰宅すると、私を迎え出た祖母が、咲良と瑞樹をみて、嬉しそうに微笑んだ。
祖母は咲良と瑞樹の世話を甲斐甲斐しくみている。
その表情はとても楽しそうで、私は咲良と瑞樹を連れてきて良かったと思った。

いつもなら慎吾の世話を焼きたがる祖母が、今日は咲良と瑞樹にかかりっきりなので、私が慎吾の世話を出来るというのは嬉しい誤算だ。

さっきまで拗ねていた慎吾も、私がお粥を食べさせてあげただけで、機嫌を良くしている。
しかし、肉などを好む慎吾には、七草粥は物足りないものだったらしい・・・・・・・