| 2004年 10月 12日(火) |
スケジュール
授業が終わると、つい足が生徒会室に向いてしまう。
今年度の下半期を迎え、私たちは正式に全権を咲良たちに引き渡し、すべての引継ぎを終えた。
だから今の私は一生徒であり、生徒会にはなんの義理も義務もない。
それでもこうして足繁く通ってしまうのは、あの部屋の居心地が良いからだ。それはみんな同じらしく、気が付けばちっとも代わり映えのしない面々が顔を揃えている。
私はとても安心して、窓際の定位置に腰を下ろした。こういうのを充足感とでもいうのだろうか。
子犬たちが何やら額を寄せ合って相談をしている。咲良と瑞樹は額をくっつけんばかりだが、白雪君は少し遠慮がちに遠くから覗き込んでいる様子が微笑ましい。隼人は…論外だな。腕を組んでふんぞり返ってその様子を眺めている。
そう言えば瑞樹の足は…? 私は心配になって近づいていった。
華奢な足首に、包帯が巻かれているのが見える。
それでも松葉杖のあるわけでなく、心配していたほど大事にはなっていないようだ。
「瑞樹、足はどうです?」
「あっ、天音先輩! ご心配おかけしちゃってすいません!」
瑞樹はぴょこんと顔を跳ね上げると、恥ずかしそうに一礼した。
うん。この間よりは顔色もずいぶん良い。
「あの後、カノンが付きっ切りで看病してくれて…。本当にいろんな事をしてもらっちゃって。
ものすごく甘えさせてもらったから、もうだいぶ良いんです。体育だけはもうしばらく見学なんですけど。
その方が俺には都合が良いし。」
そういって、瑞樹は嬉しそうに頬を赤らめた。
やれやれ…。二人っきりで一体どんな甘やかされ方をされたんだか…。
「ところで…、みんなでなんの相談ですか?」
「そろそろ文化祭ですから!」
文化祭…。もうそんな時期か。
思えば去年の文化祭は大変だった。
一体誰の発案だか…。我々はゴスロリ喫茶をやらされたのだ。
私と咲良と瑞樹、それに祥太郎先生が、それは愛らしいゴスロリウエイトレスさんに大変身させられ、なぜか雪紀、直哉、慎吾、カノンのオスカル軍団にエスコートされて、その日の美少女コンテストにまで駆り出されたのだ。
当然私が学園一の美少女に選ばれた事は言うまでもない!
あまり自慢にならないか…。
「そ、それで、今年は一体何をするつもりなんですか?」
気を取り直して聞いた。咲良が元気な子犬よろしく、いきいきと答える。
「総合アミューズメントを考えています! 自ら体験して楽しめるようなアトラクションを作ろうと思うんです!」
総合アミューズメント…。それはまた、大仰な…。
しかし、今年は咲良たちの生徒会なのだ。私たちは傍観していれば良い…と思っているのに。
「だからその参考資料の収集に、今週末みんなで遊園地に行きましょう!」
ちょっと待て、みんなって! どうしてそこで私の腕を取るかな!
「もちろん、一緒に来て下さいますよね、先輩方! 祥太郎先生も!」
「遊園地〜! いいよ! わー、久しぶりだよ、そんな所に行くの!」
ああ…、駄目だ。祥太郎先生を巻き込んだら、直哉は付いていくに決まってる。
直哉が行くという事はすなわち、雪紀が行くという事で、慎吾も行きたがるに違いないという事なのだ。
今週末はしっとりとお花の教本でも紐解こうと思っていたのに…。
こうして無理矢理、今週末のスケジュールを組まれてしまった。