2004年 10月 21日(木)

皿屋敷?!

 昼休みに生徒会室に顔を出した。
 相変わらず、子犬たちは何やら騒がしいし祥太郎先生もどうやらここでお昼を食べるらしい。
 お弁当箱を片手に何処に座ろうかな、と考えているその姿は本当に現役高校生のようで・・・見ているだけなら微笑ましい。
 だが、珍しいな。
 一応は「教師」という建前からか、祥太郎先生は滅多に生徒会室ではお昼を採らないのに。

 
 おや?
 咲良と瑞樹と、祥太郎先生が私を見ているぞ。
 何だか嫌な予感がする。


 「天音さん〜」
 「お願いがあるんですけど」

 やっぱり。
 私が視線に気が付いたのを良い事に、咲良と瑞樹が近寄ってきた。手に何やら紙切れを持っている。

 「お願い?私にですか?」
 嫌な予感がするので、即答するのは避けた。
 
 「そうです、お願いです」
 「天音先輩にしか出来ない事なんですよ」
 子犬たちはきらきらした瞳で私を見つめてくる。

 「それはお話を聞いてからですね。お願いの内容も聞かずに、お返事は出来かねます」
 当たり前だ。
 この所、咲良や瑞樹のお願いで・・・ロクな目に合ったためしがないのだ。
 同じ轍を踏んでたまるものか。

 
 「で?どんなお願いなんですか?」
 にっこりと最上級の笑顔を向けてやると、咲良と瑞樹はぱぁっと、頬を染める。
 ふふふ、笑顔一つでこの様子とは。最近、ちょっと扱いづらい所が出てきた子犬たちですがこうして見ればまだまだ。
 可愛いものですね。


 「あのですね、今度の学園祭なんですけど」
 「天音先輩にしか出来ない役があるんです。やって下さい」

 ????????
 おや?今まで「お願い」と言ってなかったか?
 この言い方はお願いではなくて、強制のような気がしますが?

 「生徒会で巨大迷路をやろうと思うんです。で」
 「皆がお化けに扮して、迷路の中をうろついて・・・全員を見かけてスタンプを貰ったら商品が出るっていうアトラクションの予定です」
 
 「「お菊さん、やってくれますよね!」」

 綺麗に二人の声が重なる。

 「・・・・・・・お、お菊さん?」
 お菊さんと言うのは・・・怪談の番町皿屋敷の女幽霊の事でしょうか。
 
 「雪紀さんと直哉さんにはもう他のをお願いして、引き受けて貰いましたし」
 「慎吾先輩にも了解して貰ってます〜。後は天音先輩だけなんですよ?」
 だから、お願いします!と子犬たちは両手を合わせて私を拝むようにしている。

 誰が、誰が、誰が!
 そんな幽霊の真似などしたいものですか!?

 「そんな事、お引き受けは」
 出来ません、と断ろうとした瞬間。祥太郎先生が割り込んできた。

 「国見君、そんな事言わないで?ね?僕もやるんだよ?」
 「え?祥太郎先生もですか?」
 「うん、そう。それにさ、去年は去年でゴスロリ喫茶だったんだから、それに比べればいいと思わない?お触りはないんだよ?」
 むぅ、確かに。
 不特定多数に笑顔を振りまくよりは・・・幾分、マシなのかも知れないが。

 「お願いです、天音さん〜。やって貰わないと本当に困るんです」
 「そうです。この企画が成功するかどうかは天音先輩にかかっているんです!」
 祥太郎先生の援護射撃に、ここぞとばかり咲良と瑞樹が言い寄ってくる。
 それに・・・・成否が私にかかっていると言われれば。悪い気はしませんね。

 「・・・・・いいでしょう。お化け屋敷の再現、という訳ではなさそうですし」
 そうか、あの遊園地の下見はこの企画の為だったんだな。
 
 「やった〜!天音さん、ありがとうございます!これで他の部活にも頭を下げなくて済みます!」
 「良かったね、咲良!会長になってすぐに謝って歩くのは嫌だもんね〜」

 飛び上がって喜ぶ二人だが、一体何をそんなに喜んでいるのだろう。

 「あ、天音さん。美術部と演劇部に後で顔を出して下さいね〜」
 くるっと私の方を向いた咲良がそう言った。
 「美術部と演劇部?」
 何故、そんな所に?
 「今回のアトラクションに衣装と設置の協力をして貰ってるんです」
 「それで、お返しに天音先輩を貸して欲しいって言われたので・・・・・」

 「もしかして、私をダシに取引をしたのですか!?」
 「だって〜。そうしたら無償で手伝ってくれるって言われたから。ね?瑞樹」
 「そうですよ。予算は貴重ですから、体で払って済むならそれが一番じゃないですか!」

 「あ・・・・・あなたたち・・・・・・・・」
 けろり、としている咲良と瑞樹に私は返す言葉がなかった。
 最初からそれを狙って、私に内緒で事を進めていたんですね・・・・・。
 


 きぃ!悔しい!!!!!
 誰が皿なんて、数えるものですか!!!