2004年 10月 25日(月)

野点・・・?

 私と瑞樹、白雪の3人がリフトを降りると、そこには慎吾を始めとしたほんの僅か生き残った奴らが待っていた。
 思った以上に私達はリフトを待つのに時間を食ってしまい、徒歩で上ってきた慎吾たちの方が早く着いていたのは誤算だった。
 さっきも下でいった通り、私よりも遅れて来た者はすっぱりと切り捨てる予定だったから、この人数が残っているのも、本当は不本意なのだ。

 更に面白くない事に、私の隣にいる白雪が隼人の姿を認め・・・あからさまにほっとした様子を見せた事だ。
 白雪に何の恨みもつらみもないのだが。
 隼人と白雪を見ていると、今日の私はやけに気に触るようだ。

 まぁきっと・・・お馬鹿慎吾にイライラしているから、その八つ当たりだとは思うけれど。


 「あの、天音さん」

 咲良が私を手招きした。
 皆から隠れるように、私を呼んだ所を見るとどうやらなにか内緒の話があるようだ。

 「何ですか?咲良」

 他の者には聞こえないように、私は咲良にかなり近寄ると頭と頭をくっつけるようにした。

 「あの、実はですね・・・・・」
 ごにょごにょ。
 私の耳に手を当てて、咲良が何かを呟く。
 「はぁ?それはどう言う事ですか?!」
 耳に囁かれたその言葉に、思わず私の柳眉が逆立つ。

 何と。
 折角ここまで来たにも係わらず、野点の道具がないというのか?

 「だから、天音さんが」
 心底困ったように、咲良が私を見た。

 「私が何だと言うのですか?」
 まさか、野点の支度が整わない事を私のせいにするのではないでしょうね。
 だが、私のその予感は当たった。

 「天音さんがここへ来るまでに振り落としてきた、演劇部の人たちが・・・お茶の道具を持っていたらしいんですよ」
 「そんなもの私の知ったことではありません」
 「それは、そうですけど」

 一体、何をしにこんな所まで私はやってきたのだろうか。
 何もかもが面白くない。
 お馬鹿な慎吾も、面白くない要因だ。

 私の事など気にもしないで、一緒に山道を登ってきた演劇部の生き残り部員なんかと、楽しそうに話をしている。
 ・・・・・面白くないったら、面白くない!

 「もう、私は帰ります!貴方達はそこで、ペットボトルのお茶でも飲んでいなさい!」

 思わず私は叫んでいた。

 「天音さん!?」

 びっくりして私を見つめたまま咲良は固まってしまっている。
 慎吾も隼人も、瑞樹も白雪も。
 談笑していた演劇部の部員達も。
 その場に居た全員が、一斉に私を見つめて言葉をうしなっていた。


 「・・・・・帰ります」

 その視線にいたたまれなくなった私はくるりと向きを変えると、山道を降り始めた。
 
 「ちょ、ちょお!天音?どないした・・・・」

 慎吾が何かを言っているが、聞こえない振りをする。
 とにかく、このイライラした気持ちのままではここにはいられない。
 さっさと山を降りて、一人になりたいのだ、私は。

 何処かで何かが羽ばたく音が聞こえたが、カラスかなにかだろう。