2004年 10月 28日(木)

火種

昼休み。
今日は生徒会室に顔を出す気分にはなれなくて、私は教室でぼうっとしていた。
たまには、こういう気分の日もあるのだ。

と、急に廊下が騒がしくなった。
教室に残っていた10人ほどの生徒が、ばたばたと廊下側へ走り寄っていく。
両隣の教室も、同じような状態になっているらしい。
ガン、となにかがぶつかる音や「痛い!」という声が聞こえてくる。
やれやれ・・・騒がしい事だ。
騒がしいのは教室だけではなかった。廊下からは誰かが走る、ばたばたという足音が聞こえてくる。
そして、その足音は私の教室の前で止む。
同時に。

「天音先輩!!!」
瑞樹が飛び込んで来た。
どうやら先ほどの廊下を覗きに行った連中は、瑞樹を見ていたらしい。
それに珍しく、一人だ。普段は大抵、咲良と一緒にいる筈なのに。

「大変なんです!一緒に来てくださいよ〜」

どうしたのかと問うよりも早く・・・瑞樹が腕を掴んで私を立ち上がらせた。
こちらの都合も聞かず、早く、早く!と急き立てるように私を引きずる瑞樹と言うのも、珍しいな。
仕方なく、急かされるままに連れて来られたのは、やはり生徒会室だった。

「中に入って下さい〜、お願いですから!」

ドアの前でどうしようか、と考えていたら瑞樹がドアを開け背中を押してきた。
中に一歩、足を踏み入れて・・・・・室内の惨状に目が点になってしまう。

普段は机の上に、きちんと置かれている筈の書類や文具類が、床に散らかっている。
それだけではない。
誰かの昼食と思しき食事や、飲み物まで辺り構わず散乱しているのだ。
未だかつて、こんな生徒会室など見たことがないぞ。

更に目を疑う光景は広がっていた。
暴れてもがく隼人を、慎吾が背後から羽交い絞めにしている。
それと向かい合わせになる形で、咲良が白雪を捕まえていた。
一体何がどうしたら、この二人がこんなに大暴れをしなければいけないのだ?

ふと、隼人の顔に目をやると・・・片方の頬が真っ赤になっている。唇も切れているのか、端からは血が滲んでいるようだ。

これはもしかして、喧嘩・・・なのか?
隼人と白雪の。

二人は無言のまま、睨みあいを続けている。
これは・・・また。新しい火種が、生徒会に生まれてしまったのだろうか?