| 2004年 10月 8日(金) |
呆気ない終わり。
三瓶氏が泣き出してしまって以来、部屋の中にはなんとなく重苦しい空気が立ちこめている。
雪紀は来た時と同じように、我関せずといった様子で全く動じていない。
咲良はその隣にちょこんと座って、雪紀のご機嫌伺いだ。
慎吾はと言えば、先ほどまでの騒がしさは何処へやら。黙々と食べ物を口に運んでいる。
その間、一言も声を発していない。
あれ?食べ物・・・?
黙々と食べ続ける慎吾に気を取られていて、何も考えていなかったが。気が付けば、テーブルの上の食べ物の殆どが、いつの間にやら慎吾の胃袋へと収まっていた。
むぅ、私なんて何も食べていないのに!
女の子たちは女の子たちで、いつしか固まって座っている。
ちらちらと、その視線が向けられるのは・・・祥太郎先生と何事かを話している、三瓶氏にだ。
大の大人、しかも学校の教師にいきなり泣き出されては、いくらツワモノの女子高生でも流石に引くか。
実際、本当に嫌ってるのならこんな所に一緒に来させるなんて事はないだろうから。
彼女たちが三瓶氏に向けるあの、態度や言葉遣いは一種の「強がり」みたいなものなのだろうと、私は思う。
だが・・・教師としては、やりにくい事この上ないだろうな。
女子高生相手では、ほんの少し怒れば泣かれ、たまたま手が触れれば「セクハラ」だと騒がれて。全く女子高の教師も、楽ではないだろう。
その点・・・祥太郎先生は。
マーメイドにされたり、隼人に絡まれたり、と色々な目に合ってはいても・・・男子校の気安さか、それとも直哉の威光か。
三瓶氏ほど、教師と言う職業に疲れてはいないようだ。
誰が歌を歌うでもなく、時間だけが過ぎていく。これはカラオケなのだろうか?
「なーんかさぁ、つまんなーい」
グラスに刺さったストローを弄びながら、彼女達の一人が言った。
「うん、だね〜。ってか、さんぺー泣いちゃったし?」
「なんか・・・あたしらが泣かしたみたいで、変な気分だよ〜」
ぼそぼそと呟かれる、彼女達の言葉に三瓶氏は身を竦める。
「まさかさんぺー、泣くなんて思わなかったし」
「そうそう。このままじゃ悪いから、あたしらがデートしてやるからさ〜」
「元気出してよ、ね?」
何なんだ、この展開は。
「マジで、ごめんね〜。あたしらが遊びたいって言ったのに」
「今日はさんぺーが可哀想だから、帰るよ」
「でも、絶対また!落としに来るからねっ!」
そうしてすくっと立ち上がった女子高生たちは、ばいば〜いと部屋を出て行ってしまう。
「ほら、さんペー。行くよ?!」
「あ、うん!ごめっ、俺行くからっ!」
私達と一緒に、唖然として彼女らの行動を見ていた三瓶氏が、呼ばれて我に返った。
「これ・・・今日の支払いに、つ・・・使って!ちょ、まって、待ってよっ!」
財布から取り出した数枚の千円札を机の上に置くと、三瓶氏はわたわたと部屋を飛び出して行った。
「な〜、なんやったん?俺ら」
一人お腹を膨らませて、満足そうな慎吾の暢気な声が響いた。