2004年 11月 10日(水)

灯台元暗し

白雪が攫われた事で、私は非常に忙しくなった。
出来る事なら私も、隼人と一緒に白雪を探しに行きたいが、直哉が言ったとおり・・・この「お化け屋敷」から、お化けが全員消えてしまう訳にはいかないだろう。

「天音さん!」
「天音先輩!!!」

祥太郎先生から連絡を受けたのだろうか、咲良と瑞樹が薄暗い迷路の中を走ってきた。
二人ともこの暗い中でも分かるほどに、表情がない。

「話は聞きましたね?」

聞きましたか、ではなく「聞きましたね」と確認を取るのは、もうこの二人も白雪が攫われた事を知っているからだ。

「どういう事なんですか?!」
「誰が、白雪を?」

二人は必死の形相で私に問いかけてくるが、今ここで悠長に教えている暇はないのだ。
とにかく、足りなくなった人員を早急に補填して・・・。
そう考えた私は、咲良に言った。

「確かに大変な事になりましたが、今・・・私達が慌てても仕方ありません。もう、隼人と直哉、それに慎吾が探しに行っています。学園の外にも出入りできそうな所全部に、ガードマンの配置をお願いしました。
咲良や瑞樹が、今しなければならないことは何ですか?」

少し冷たい言い方だったかも知れない。二人はますます表情を固くする。
心配なのは、私だって分かっているのだ。だが、どうする事も出来ないではないか。

「・・・今、することは・・・この、アトラクションを成功させる、事です・・・」

暫く逡巡した後、咲良がはっきりと告げた。
私はその言葉に頷く。

「瑞樹、今から演劇部の人に連絡取れる?」
「演劇部?」
「うん。直哉さんと隼人・・・それに慎吾さんの代わりに、誰かに入って貰わないと・・・」
「・・・・そうだね、分かった」

すぐ、言ってくるね!
そう言って瑞樹が非常口から出て行こうとした。

「おい、瑞樹。俺の代わりも頼んで来い」

雪紀だった。すでに制服に着替えている。

「俺も探しに、行こう」
「雪紀・・・・・」
「あれでも、可愛い後輩だからな。それにその、一巳とかいう奴も気に入らない」

気に入らないのは、白雪を攫ったからではなく・・・咲良の初仕事を、駄目にしたからでしょう。
そう言いたかったが、辞めておいた。



こうして、私と咲良、瑞樹は残ってお化けを続けて、演劇部から借りてきた部員達に、隼人たちの代わりをさせ。
いつのまにか、午前の部は終了していた。
しかし、未だに白雪を見つけたと言う連絡は入らない。
数回のメールは来たが、そのどれもが『〜の教室には、いない』という物だった。
この広い学園の中で、今日・・・一番一目に付かない場所はどこだろうか。
空き教室、おあるには、あるが・・・大抵は資材置き場や何かになっていて、不特定多数の人間が忙しなく出入りする筈だ。


・・・待てよ。
もしかして、あそこなら・・・・・。
今日に限って、誰も出入りをしないのではないだろうか。
私は急いで隼人の携帯に電話をかけた。
2度程コールが鳴って、隼人が出る。

「隼人?!」
「うん、天音さん?」
「白雪は?」
「・・・・まだ、見付からない。兄貴も慎吾さんも一緒に探してるし。雪紀さんは俺達とは別の場所を、探してる」

やはり。

「用具室は、探しましたか?」
「用具室?」
「体育用具室です!あそこは資材置き場にはなっていませんし、講堂からも近い。誰にも姿を見られずに隠れるにはもってこいの場所じゃないですか!」
「ちょ・・・ま、待って!今、見るから!」

がさがさという音が、電話越しに聞こえる。どうやら見取り図を確認しているらしい。


「兄貴!慎吾さん!!!あそこだっ!!!!」

隼人の怒鳴り声がした。