| 2004年 11月 12日(金) |
学園祭2日目
今日は、学園祭2日目だ。
昨日の騒動を知らない一般の生徒達は、相変わらず暢気に学園祭を楽しんでいるようだ。
隼人と白雪は、今日の学園祭には参加していない。これは咲良が「生徒会長」として下した、決断だった。
『絶対に、参加します。大丈夫です』
と言い張った白雪に、あの咲良が有無をも言わさぬ物言いで、今日の欠席を了解させた。
私達は一度家に戻った方がいいのでは、と言ったのだ。
が、それに関しても「帰りません」の一点張りの白雪にとうとう隼人が諦めたのか「寮で付き添う」と言う代替案を出して何とか事態は治まった。
なので、今日は二人共に学園には来ていない。
昨日の拉致騒動の時に代役を頼んだ演劇部の部員に、今日も代わって貰っている。
彼らには、白雪が急に体調を崩した、とだけ言ってある。
精神面はともかく、外見はおっとりと、大人しやかに見える白雪の急な体調不良を不振がる人間はいなかった。
二つ返事で引き受けてくれたので、私も一安心だ。
あれから一巳は雪紀と直哉に何処かへ連れて行かれたのだが、その行き先は私達には知らされていない。
もっとも、何もなく「無罪放免」と言う訳には、行かないのだろう。
あのまま家に帰してしまえば、今日もまた・・・一巳はここへやってきた筈だ。
簡単に白雪を諦めてはいなかったことは、あの場にいた誰もが気が付いていた。
今まで・・・白雪がどんな目に会っていたかは、想像の域を超えなかったが・・・昨日の一巳の姿と行動を目の当たりにしてみれば、いとも容易く合点が行く。
本当に、何と言う事なのだろう。
普通の人間ならば、耐え切れずにとっくに、おかしくなっていても不思議ではない。
それだけを思ってみても、白雪のあの我慢強さと言うのか、精神力には私ですら恐れ入る。
「おっ、おったおった。天音〜」
薄暗いアトラクションの中を、どすどすと慎吾が私に近寄ってくる。
いつ見ても・・・暢気そうに見えるな、こいつは。
昨日の騒動の後も、ただ一人何も無かった顔をしていたのが、この慎吾だ。
「何ですか、騒々しい。まだ、今日の仕事は終わってはいませんよ」
「ほんなん知っとるわ」
「じゃあ、さっさとあなたの持ち場に戻りなさい」
未だに重たい気分の私の対応は、素っ気無い。
こんな私の前に、その能天気な顔を出すなんて・・・八つ当たりをして下さい、と言わんばかりの行動だという事を、慎吾は気付いていないのだろうか?
「いやな、その。今日、学園祭が終わったら飯でも食いに行かへんかな〜と、思ったんやけど」
それは嬉しそうに笑って慎吾が言った。
「・・・・・いいでしょう」
「ほんまか!?約束やからな!」
にぱーっと、締まりのない顔で、慎吾が私を見た。
ああ、そうか。
慎吾は慎吾なりに、昨日の事を考えているだろう私の気分を推し量ってくれていたのだな。
何も気にしていないように見えたのは、一人位は平気な顔をしていなければ、あの場がどうにもならなくなっていたからだろう。
久々に私は、慎吾を見直した。
今日の夕飯は、慎吾の好きなものを食べさせてやろうかな。