2004年 11月 28日(日)

DVD鑑賞会

昨日、祥太郎先生にまんまとたばかられた私は、がっかりしながらそれでも習慣のように生徒会室に行った。
すると祥太郎先生が楽しそうにやってきて言う。
「ねえねえ、国見君、明日うちに来ない? 一緒にDVD見ようよ!」
「DVD…ですか、一体なんの…?」
祥太郎先生は嬉しそうに私に擦り寄って耳打ちした。

「決まってるじゃない。マツケンサンバのDVDだよ!
一緒に踊るんだから研究しなくちゃ!」

…なんでそんなに楽しそうなんだろう…。

するとそこに不機嫌丸出しでぬっと首を突っ込んできたのは直哉だ。
「祥先生、一体なんの相談です?
DVDならうちにもあります。天音なんか誘わないで、俺に言えばいいじゃありませんか。」

「えー、だって直哉君はさあ、太郎と喧嘩するんだもん。」
そう言えばそうだった!
先生のうちにはあの小憎らしい猫が…私の天敵とも言える猛獣が住んでいるのだった。
これはどうあっても、先生のうちに行くなんて、拒まなくてはならない。

「祥太郎先生、直哉のうちなら私も都合がいいです。
引越ししてから…まだ招待してもらっていませんし、この機会にお邪魔しておきたいです!」
多少苦しい言い訳だが、ごり押しせねば!

「えーでも、出し物はみんなナイショなんだけど…。」
「…マツケンサンバはたしか群舞だったでしょう!
この際、直哉も引っ張りこむべきです。無論慎吾も加わります!」
慎吾は喜んで加わるだろうが…許せ直哉。

祥太郎先生は目を見開いて直哉の顔を見上げ、それから嬉しそうににやりと笑った。
ああ…悪魔の微笑を目撃したような気がするな…。


と言うわけで、私は今直哉の新居にいる。
直哉らしい、最低限ながら一つ一つが奢った家具の置いてある部屋に、祥太郎先生と慎吾との4人でかしこまってDVDを見ているのだ。
おりしも、昨日の夜たまたまやっていたという歌謡祭のDVDが持ちこまれて、今きらびやかな和服の群れを見させられている。

ちなみに祥太郎先生はなにを思ったか、ケージに猫の太郎を詰めてきていて、それが私を戦々恐々とさせている。

祥太郎先生の隣に嬉しそうに座っていた直哉が、だんだん愕然とした顔つきになってきた。
きっと我々がなにか楽しい映画でも見るものだと信じこんでいたのだろう。

「あの…祥先生、これは…。」
「うん、これはね、今度クリスマスにみんなで集まるでしょう?
そのときの余興に踊るんだよ。ここにいるみんなで。」
「は…? ここにいる…みんな?」
「うん、そう。みんな。」
祥太郎先生は直哉の腕に頬を擦りつけるようにしてしがみついた。
「もちろん、直哉君も一緒に踊ってくれるよね。ね?」
祥太郎先生の瞳が…どうやったらキャッチライトもないのにあんなにキラキラするんだろうか…。
直哉の背中がギシッと鳴った。いや、そう見えた。
そうして直哉陥落…。可哀想に。

続いて先生が取り出したのは、その踊りの振り付けを紹介したDVDだ。
細身の、スタイルの良い振りつけ師が、軽やかに踊っている。

「これはさ〜、葵ちゃんから回ってきたんだ。お仕事関係で手に入れたんだって。
この人、凄いカッコイイよね〜。これもらったから、今年の出し物はこれにしたんだ!」
すると…諸悪の根源は、祥太郎先生の姉上というわけか…。

そうして早速ダンスの練習である。
案の定慎吾は大喜びで踊りまくっているが、直哉の顔と来たら…半分死んでいるようだ。
祥太郎先生にいちいちツッコミを入れられては、泣きそうになって一生懸命腰を振っている。

「でも、さすが国見君は踊りの先生だけあるね〜!
その腰の振り方、凄い堂に入ってるよ〜!」
先生…日本舞踊では腰なんか振りません…。

しばらく強制的に躍らされたあと、先生がごそごそと荷物を探り出した。
はっとして見ると、そこには思った通り、例の…デジカメ!
「ねえねえ、この練習風景撮っていい?」
懲りない発言…しかし天使の微笑み付ではついうっかり頷いてしまいそうになる。いかんいかん!

「先生…撮るならくれぐれも普通の写真にして下さい。後で私が許可できないようなのは止めてください。」
「えー、普通の写真じゃつまらないのに〜。」
やっぱりな…。
「それから、最初に申し上げておきますが、今回のことは内輪だから乗ったような物なのですから、絶対におばあさまに漏らしたり、写真を渡したりしてはいけませんよ!」
最初に釘をさしておかねば。

「うーん、それは無理〜。」
祥太郎先生は私の怖い顔にもめげずに、にっこりとそんなことを言う。
「だって、今回の発案はおばあさまだし、場所もクリスマスの頃なら公演があって、演舞場があくからそこをお使いなさいって言って下さったの、おばあ様の方からなんだよ。」
………なんですと?

「私も参加いたしますから、うんと楽しい集まりにしましょうね〜って、言ってらっしゃったよ。
だから僕、知恵を絞ったんだ。マツケンサンバなら楽しくて華やかでしょ。」
おばあさま…あなたって人は…。

「それにね、きっと国見君を仲間に誘えば、衣装の調達ができるかと思って。
あーゆー、キラキラの和服とか、殿様のヅラとかあるでしょ?」
先生…日本舞踊にはそんなもの…ありません(泣)

「とにかく国見君は、僕のメモリースティックから恥ずかしい写真も見たんだから、協力しなくちゃダメなんだよ。」
「恥ずかしい写真って! なんですそれは!」
直哉が弾けるように反応する。
昨日私もチェックしたのだが、祥太郎先生の言う恥ずかしい写真とは、
大股を開いて大事なところを舐めている…猫の太郎の写真だった。

………割に合わなすぎる!

こうして私たちはそれぞれDVDを持たされて帰路についた。
あと1ヶ月…気が重い…。