| 2004年 11月 29日(月) |
究極?
「違うって、何度言えばわかるんですかっ!」
この、筋肉お馬鹿っ!!
お稽古場の中に、私の罵声が響いた。
さもありなん、私の前には半泣きの表情をした慎吾が立っている。
「も〜かなわんわー。なんやねん、さっきから〜」
俺かて、頑張ってるやないかい。
慎吾がそう、ボソッと呟いたのを私のいい耳は聞き逃したりは、しない。
他の場所ならいざ知らず。
この「お稽古場」で私に文句を言うなんて、大した度胸じゃありませんか・・・。
「お黙りっ!誰が私に踊りを教えて下さいと、言ったのですか?!」
私は手にした扇子の先で、慎吾をぴしり、と指し示した。
「う・・・・そ、それは・・・」
「第一、私がなんでマツケンサンバなんぞを、あなたに、懇切丁寧に教えてあげなければいけないんですか?!
あなたが、直哉には負けたくないって、言ったからじゃないですかっ!」
そうなのだ。
まんまと祥太郎先生の策略に乗せられて、私達はクリスマス会で「マツケンサンバ」を踊らなければいけないのだ。
祥太郎先生も、勿論踊るのだが。私と慎吾と直哉も踊る羽目になってしまった。
私は、いい。祥太郎先生も、見れる踊りだった(意外にも!)。
問題は・・・慎吾と、直哉だ。
慎吾はノリは、いいのだ。だがノリが良すぎて、どうも踊り全体が変に見えてしまう。
直哉は・・・・・直哉はどうやら「恥」を捨てきれていないらしく、動きが小さく緩慢だった。
現在の所、慎吾と直哉の踊りはどんぐりの背比べ、いや・・・50歩100歩といった所か。
だが、直哉は武道を極めている。恥を捨てて開き直ってさえしまえば。恐らく相当レベルの高い踊りになるだろう。
そうなったら問題は、この目の前の筋肉お馬鹿ただ一人。
『そんなに大笑いをしてると、後で貴方が泣きますよ?』
直哉を見て爆笑していた慎吾に、私が投げたその一言がきっかけだった。
その帰り道だった、慎吾が私に踊りを教えて欲しい、と言い出したのは。
私としても慎吾が皆の前で笑いものになるのは耐え難い。
という事で、この特訓が始まったのだが。
どうにも、ならない。
この一言に尽きるのだ、慎吾の動きは!!
運動神経は良い筈なのに、どうしてこうも、踊りのタイミングがずれるかな・・・。
リズム勘が、皆無なのだ。おそらくは。
「さぁ、もう一度最初からですよ!今度はちゃんと、音を聞いて踊ってくださいね?!」
「だから、ちゃんと踊ってんがな〜!」
「踊ってないっ!」
そして又。お稽古場に私の声が木霊する。
究極の、二択かもしれない。
この馬鹿に踊りを教え込む事と、笑いものになった慎吾を見て悲しくなる私、とは。