2004年 11月 4日(木)

季節はずれ

寒い・・・物凄く、寒いぞ!!!この部屋は。
生徒会室に入るなり、私は踵を返して廊下に飛び出したくなった。だが、それをしなかったのは・・・。
私を見ている咲良と、瑞樹の目が『出て行かないで!!!』と語っているからに、他ならない。

案の定、隼人が凄い目で白雪を見ていた。
当の白雪はそれを全く気にもしていないように、手元の書類を確認しているのだが。
こんな部屋に、誰だって居たくないだろうな・・・。
泣きそうになっている咲良と瑞樹の気持ちも、理解できる。

勿論、先日の様に派手な?喧嘩を繰り広げている訳ではない。
だが・・・雰囲気というものが、あるじゃないか?
隼人が一人、ここに居るだけで。部屋の中に冷たい風が吹き込んで来るような、そんな錯覚に捕らわれる。
私にも以外な事だったけれど。

どちらかと言えば激しやすい隼人が、こんな怒りの表し方をするなんて。
やはり、直哉の弟なのだな、と認識を改めざるを得ないではないか。
ほら、こうして見ている今だって・・・隼人のいる場所から、雪交じりの冷たい空気が噴出しているようだ。


「あ、会長?この書類ってこれでいいですか?」

椅子から立ち上がって、白雪が言った。
手にした書類に、咲良の確認を求めている。

「えっ?あ、ああ。多分・・・いいと、思うよ・・ね?瑞樹!」
「へ?う、うんっ!大丈夫!!いいよ、これで!!」

咲良と瑞樹が、慌てて書類を確認している。
慌てふためくその姿に私はほんの少し、心が軽くなるのを感じた。やはり、この二人は私の心のオアシスだ。
可愛らしい子犬ちゃんだ。

しかし、この雰囲気は本当にどうにかならないものだろうか。
今週末には学園祭だと言うのに。
確かに会場の設置や、その他の細かい事は、思っていた以上に着実に進んでいる。
隼人も宣言通り、自分に与えられた仕事はきちんとこなしているようだし。

今も、雪紀と直哉が会場の下見にいっている所だ。あの二人のゴーサインが出れば、あとは当日を待つのみだ。
生徒会としては、だが。
だからと言ってこの、空気は。こんなぴりぴりとした空気の中で、無事に学園祭を終える事が可能なのだろうか?
白雪も、白雪だ。
隼人の機嫌を取るのは容易い事だと分かっているだろうに。無視を決め込んでいるのだから。

外見からは思いも付かないほど、芯が強いのだろうな・・・・・。



「おっ!やっぱりここにおったんやな!」

大きな声を張り上げて、慎吾が入ってきた。

「白雪、お前にお客さんやて、他の1年が言うとったで?」
「お客さん、ですか?」
「おう!何でも、正門の所で待ってるからって、言われたらしいけど?」
「・・・・・誰、でしょう」

慎吾から伝えられた言付けに、白雪の顔が曇る。
確かにおかしい。
私が以前、白雪に聞いた話では、白雪がこの学園に居る事など、家族以外の誰も知らないと言うではないか?

「見えませんね、ここからじゃ・・・・・」

そっと窓際に寄った白雪が、零した。
正門は、この部屋からは確認できないのだ。

「ちょっと、行って来て良いですか?」

咲良にそう言って、返事も待たずに白雪は出て行ってしまった。
だが部屋を出て行く時、私が見たその顔は。
一切の表情を失くした、まるで能面のような白い顔。
もしや、これは。

「隼人!今すぐに、白雪を追いかけなさい!」
「白雪!!」

私と隼人の叫びは、同時だった。
隼人は椅子から立ち上がり、鬼のような形相で部屋を飛び出して行く。

とても、とても嫌な予感がする。
季節外れの、嵐が・・・・・吹き荒れるような、そんな予感が。