| 2004年 11月 6日(土) |
学園祭1日目
白雪が、おかしい。
表面上では普段通りを装ってはいても、昨日の騒動を思えばそんなものは「作られた」顔だという事が、私には分かる。
一巳が立ち去った後、余りにも蒼白だった白雪を私は早々に隼人に寮まで送らせた。
本当は雪紀や、直哉・・・咲良達にも教えておかなければいけない事だったのだが。
『お願いします・・・どうか、他の人には言わないで下さい・・・』
私を見上げ、震える声と真摯な瞳でそう言った白雪を。
どうして裏切る事が出来ようか。
隼人も、そんな白雪に何か言いたそうにしていたが、結局は無言で寮まで送って行った。
その道中でどんなやり取りがあったのか、私には知る術は、ない。
朝を迎え、今日は休むのではと思っていた白雪が生徒会室に顔を出した時は、本当に驚いた。
何が、ここまで白雪を強がらせるのだろうか。
怖いと思うことも、嫌なら逃げ出すことも。時として、必要な事なのに。
なのに白雪は、それをしない。いや、もしかしたら出来ないのかも知れない。
「今日は学園祭初日です!打ち合わせ通り、着替えを済ませたら行動のアトラクションで待機して下さい。ええと、スタンプは忘れないで持って行って下さいね?入場者に見付かったら、カードにスタンプを押してあげて下さい」
にこやかに、咲良が説明をする。
そうだ、もう・・・学園祭は始まってしまう。
「では、今日一日、よろしくお願いします!」
着替えを済ませた私達は、咲良の指示通り行動へと向かった。
「天音さん・・・・・」
そっと隼人が近寄ってくる。
「あいつ、誰にも言うなって・・・まだ、言うんだ。俺がどれだけ言い聞かせても、首を縦に振らない」
困惑した様子で、隼人が言う。その表情には悔しさすら滲ませて。
「私も、雪紀達に言いたいのは山々です。ですが、それを言ってしまって、白雪から恨まれるのも困るんです」
「俺だって、そうだ・・・。白雪に嫌われたくねぇよ」
「とにかく。私はなるべく入り口付近にいるようにします。もし一巳が現れたら、すぐにあなたの携帯に連絡を入れますから」
「うん・・・」
「あなたは、白雪から目を離さないように」
「分かってる」
私と隼人は、密やかに約束を交わす。
「あいつ、絶対来る。ああいう目をした奴が、一番・・・危ねえんだ・・・」
ぼそり、と隼人が呟いた。
私も頷く。そして昨日見た、一巳の目を思い出す。
隼人が時折浮かべる、怒りに燃える目とは違う。雪紀や、直哉・・・前田先生が浮かべるものとも、違う。
彼らは決して、弱者に対してそういうものを顕わにはしない。
だが、一巳の目に浮かぶそれは。
獲物を弄り、苛む事にのみ執着をする、冷ややかな狂気だ。
学園祭一日目が、幕を開けた。