| 2004年 11月 9日(火) |
何処へ・・・?
「どういう事だ!」
私達の後ろから来た直哉が、叫んだ。
祥太郎先生はにこやかに笑いながら、その場にいた数名のお客さんにスタンプを押している。
どうやら何か、書き込んでいるのは・・・白雪のスタンプでは無いが、有効・・・という、認めらしい。
そこへ、ご丁寧にも何処に隠し持っていたのか「シャチハタ」で印まで押しているではないか。
だが、正直この祥太郎先生の機転で、助かったのは事実だ。
客達はこれもアトラクションの一つと思ってか、文句も言わないで次のブースへと移動してくれる。
私は素早く、山小屋の扉を閉める。
「どういう、事なんだ?!隼人・・・説明、しろ」
直哉が問う。
だが、隼人は呆然と・・・壊された非常口を見つめているだけで、それには答えようとしない。
「隼人!」
もう一度、直哉の声が飛ぶ。だが、今度もまた・・・隼人が答えることはなかった。
「天音・・・・どういう、事だ?」
隼人から聞くのを諦めたのか、直哉が私を振り向いた。もう、隠しては置けないだろう。
第一、一巳がこの暴挙に出てしまったのだ。今更、白雪の過去を隠せる筈が、ない。
私と隼人は間違っていたのだろうか?もっと早くに、直哉や雪紀・・・皆に相談していれば、この事態は避けられたのだろうか?
いや、それこそ今更ではないか。
とにかく、直哉たちの力も借りて・・・一刻も早く、白雪を探し出さなければいけない。
「どうして、それを早く言わなかったんだ・・・・・」
私の説明を聞いた直哉は、思った通り大仰にため息をついた。
そして、つかつかと隼人の方へと歩いていく。
ばきっ、という鈍い音が、室内に響いた。
直哉が、隼人を殴ったのだ。何の予備動作もないまま、ここまで派手な音がする位、人は人を殴れるものだろうか。
隼人が、口の端から真っ赤な血を流している。直哉が殴る素振りを見せていなかったのだ。隼人も油断していたのいだろう。
この隼人の姿を見るのは、何度目だろうか?すっかり、見慣れてしまったではないか。
「兄貴・・・・・」
隼人が直哉を見上げた。
「何を、ぼさぼさしているんだっ!お前が、守ると言ったんだろう?!」
「でもっ・・・!」
「でも、じゃないだろっ!早く、白雪を探しに行け!俺もすぐに行くからな!」
直哉の言葉で、隼人の顔に生気が戻る。
うん、と頷いて。口元の血を、指先でぐいっと拭い。気ぐるみを脱ぎ捨てて、隼人が駆け出していく。
こんな時に思うのは、甚だ不謹慎とは思うのだが。
・・・・・隼人、下にジャージの長ズボンと、Tシャツを着ていてよかったな・・・。
「さて、天音。もう一度、詳しく説明しろ。それから、すぐに・・・雪紀に連絡だな」
「咲良達には?」
「まさか黙っている訳にも、いかないだろう?それは、祥先生に頼むとしよう・・・」
「で、私は?」
「天音は、ここで待機だな。まさか、お化けが全員消えるのはまずいだろうが。あ、慎吾は借りていくぞ?」
そう指示を出すと、直哉はおもむろに携帯を取り出した。雪紀に連絡するのだろう。
雪紀や直哉の指示で、出入り口及び、学園の敷地内から外へ出れるような所には速やかに、ガードマンが配置された。
元々、迷子防止にガードマンは頼んであるのだ。問題はないだろう。
これで一巳が白雪を外部へと連れ出すことは、まず不可能になった。きっと、この学園内の何処かに、隠れている筈だ。
あの赤い頭は相当目立つ筈だから、白雪を連れて隠れる場所にも限りがあるだろう。
一刻も早く、白雪を探し出してやらなければ。