| 2004年 12月 26日(日) |
マツケンサンバ
いつも美味しいおばあさまのお料理を頂きながら歓談した後、いよいよレクリエーションの部に突入した。
「ねえねえ、国見くん、あれ、ちゃんと用意してくれた?」
少しお酒が入って頬を染めた祥太郎先生が、嬉しそうに私の腕をつつく。当然マツケンサンバの衣装のことだ。
「もちろんですとも。」
私は重々しく頷いた。
「早速お披露目しましょう。」
「え、もう? 僕はトリに考えていたんだけど。」
「これから色々ゲームをしますから、それに付随して、みんなにマツケンサンバを覚えてもらう必要があるんです。」
「えー、もしかして罰ゲーム?」
「それも、総得点制にしましょう。」
祥太郎先生は瞳を煌かせて、頬を紅潮させた。
しかし、その罰ゲームのターゲットが自分自身だと言うことまでは気付いてないな。
「はい、それでは白鳳生徒会、集合。」
慎吾に手伝わせて持ちこんだ大きなダンボール二つに目を奪われているみんなに向かって声を掛ける。
祥太郎先生はいそいそと音楽の準備をしている。不安げなみんなの前で衣装を広げた。
「な…なんだこの、キラキラな和服は…。」
隼人が絶句している。慎吾は一番手近のLサイズをもう引っ掛けて、ひらひら走りまわっている。
「これから生徒会全員でマツケンサンバを踊ります。」
「「「えーっ!」」」
子犬たちプラス白雪の甲高い声が響き渡った。
「なにそれ! 俺たちそんなの全然聞いてませんよ〜!」
「大丈夫! 僕が教えてあげる! 楽しいよ〜。」
「ふふふ。君たちはいつから私の言うことに逆らえるほど立派になったんですか?」
祥太郎先生と私との両方向から突っ込まれて、子犬たちはあっさり撃沈される。
しかし敵はまだいた。雪紀だ。
「俺はこんなもの着ないぞ。ましてやそんな奇天烈な踊りも踊らん!
そう言うのは慎吾が得意だろう。あいつに任せておけばいい。」
「あら、皆さん全員で踊ってくださるのではなかったの? まあ…残念だわ。」
おばあさまが脇からいきなりツッコミを入れる。雪紀はさすがに気まずげな表情になった。
「いいんだよ〜、踊り苦手なら踊らなくても。でもさあ、住園くん。」
祥太郎先生は首を傾げながらニコニコしている。
「踊らないなら歌で参加してくれる? テープと一緒でいいから。音量が少し淋しいと思ってたんだ。
ね? マツケンサンバの歌、歌うのと踊るのと、どっちがいい?」
にっこりわらってマイクを差し出す祥太郎先生。雪紀のうしろで直哉が、あきらめろと言わんばかりに、ぽんぽんと肩を叩いている。
祥太郎先生…今更だが、なんて交渉上手なんだ…。
雪紀そして、その様子を見ていた隼人が早々と白旗を上げた。
これで不承不承と言えども、生徒会全員が揃ったわけだ。
スパンコールびっしりの重い和服を引っ掛け、ちょうちんアンコウのヅラを被ると、舞台はいきなりエセマツケンでいっぱいになった。
皐月嬢がおもしろくもなさそうな表情で、テープのスイッチを入れてくれた。
………それにしても、どうして私が最前列のまんまんなかの立ち位置なのだろう…?
おばあさまと野乃香が芯から楽しそうに、そして皐月嬢がおざなりのようにした拍手に包まれて、とりあえず1回目のマツケンサンバが終わった。
「それじゃ皆さん、今の踊りをよーく覚えておいてくださいね。今の踊りは後から罰ゲームとして再登場します。
もちろん罰ゲームにはさらに恥ずかしいオプションを考えてあります。」
野乃香とおばあさまが楽しそうに声を上げられた。
「それではゲーム大会をはじめます。
まずは………王様ゲーム!」
慎吾が小道具を持って登場した。ルールをご存知ないおばあさまの為に、懇切丁寧なルール紹介の後、いよいよゲームが始まる。
親はとりあえずの1回目と言うことで、私がすることになった。
戻ってきて私の傍に座った慎吾に、私はそっと耳打ちする。
「慎吾、手はず通り、先生に3番を引かせましたね。」
「おう、ばっちりや。」
3番だけは小さな目印があって、私か慎吾が親になる時は、3番を集中攻撃できるようになっている。
私は声を張り上げた。
「3番! 真中に出て、一気飲みをして下さい。」
お酒に酔っ払わせてしまえば、ますます操作しやすくなるに違いない。
「あっ、僕3番だ! なになに? お酒でいいの? それじゃ…。」
おかしいな…先生はお酒に弱いはずじゃなかったろうか…なんであんなに嬉々としているんだろう。
そこに制止の声が掛かった。おばあさまだ。
「お酒の一気のみはダメですよ。体にお悪いです。ここは私が用意しましたこれで、一気のみをなさい。」
と言っておばあさまが持って来られたのは…おばあさま特製のお汁粉…。祥太郎先生の大好物の一つだ…。
「えっ、これでいいの? わーい、いっただきま〜す!」
喜ばせてしまった…。
しかしまだゲームは始まったばかり。
復讐に燃える私は、手薬煉引いて、先生の嫌がる顔を待ちうけているのだ。
さあ…どうやって苛めてやりましょうか。