2004年 12月 7日(火)

す、すごい・・・・・

「あ・・・天音、見てやコレ!」
「どうしたんですか、慎吾。ずぶ濡れじゃないですか・・・もしかしてこの寒いのに、着衣水泳・・・」
「んなわけ、あるかいな!」
「いや、あなたの事です。やってもおかしくはありません」
「・・・・・・・・・ホンマ、天音。俺と言う人間を誤解しとるらしいな・・・・・・・・・」

慎吾がじとーっと、据わった目で私を睨み付けて来たがそんなもの怖くも何ともない。
しかし、まぁ。
見事なぐらい、頭の先からつま先までずぶ濡れの、濡れ鼠だな。

「どうしてこんなに濡れてしまったんですか」

とりあえず慎吾の教室まで着いて行き、持っていた部活用の鞄の中からタオルを出させて体を拭かせる。
制服も濡れているから、そのままトレーニング用に持ってきているジャージを着せてしまう。
こういう時、体育会系は便利なものだな。
体操着など無くても、どうとでもなる。

「まったく、かなわんわ。昨日から何だっちゅーねん・・・・・・・・・」

え、昨日?!
私は慎吾のぼそぼそとした呟きを聞き逃さなかった。

「昨日からどうしたんですか?」

好奇心に駆られるまま、そう聞いた。

「せや、天音〜。ホンマついとらんねや!」
「何が、です?」

堪えろ、私。頑張るのだ、私!
気合を入れて顔を引き締めておかないと・・・目が、三日月になってしまいそうだ。

「夕べな、寮の食堂で」
「ええ」
「1年が俺の頭の上から、飲みかけの茶をだーっ、と!!」
「だーっ、と?」
「零してくれたんや!」
まー、片す時やったから温くなっていて火傷まではせんかったけど!

「それは・・・災難でしたね・・・・・・?」
「せや!それだけやないねん!風呂に入ろ思うたら、ボイラーが壊れたとかで、水やったし!宿題やろう思ったら、教科書は学校に置きっぱなしやったし!!今朝は今朝で少し寝過ごしたら、食堂のおばちゃんが何を間違ごうたんか、俺の分のおかずはないし?!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ほんで、学校来ようと思って外に出たらカラスが俺の頭に止まりよるし、来たら来たで二階の窓からバケツの水捨てる阿呆はおるし!」

なるほど、それであんなに濡れていたのか。

「何でこんなに、ツイてないんや?!」
俺は強運の男やのに!

椅子の上に片足を乗せて、拳を上に突き上げて慎吾が叫んだ。
そして次の瞬間。

「ぶぅえーっくしょんっ!!!でっ!」

盛大なクシャミと共に足を滑り落とし、床に転がりしたたかに後頭部をぶった。

「・・・大丈夫ですか、慎吾?」
「んなわけ、あるかいな〜」

床に転がったままで痛い、痛いと咽び泣いているその姿に。
流石に私の胸も少々痛むと言うものだ。
昨日、あれから電話で慎吾を呼び出した私は一目を避けて校舎の裏に慎吾を誘い込み。
キスを、した。
勿論・・・熱烈なやつを、だ。心の中で「移れ、移れ」と念じながらのキスに、ここまで効果があるとは・・・。
恐るべし咲良の知識。

可哀想に、慎吾のこの不幸は明らかに私の凶運が乗り移ったのだな。
だも、まぁいいだろう。
私に何の被害もないのだし!これで安心して暮らせるというものだ!