| 2004年 2月 14日(土) |
大嫌い・・・
今日は、待ちに待ったバレンタイン当日のはずだった。(私に、ではなく慎吾にとってだが)。
なのにいくら待っても慎吾からの連絡はなかった。最初は連絡出来ない事情があるのだろう、と思っていたのだが・・・今日で合宿は最後の筈だし、今日になっても電話の一つ、メールの一つも寄越さないのはおかしい。
私は学園の教職員名簿を片手に、水泳部の顧問に電話をした。もちろん、何時に慎吾が戻ってくるのかを聞き出すためだ。
最初はなかなか口を割らなかった顧問の教師も、私が生徒会の用事だと切り出すとすんなり教えてくれた。
・・・・・・当たり前だ。私達生徒会の事には並大抵の教師は口を挟めない。ましてや「抱かれたい男」のイベントが控えている今、私達に逆らう教師はいないだろう。
きっと、顧問の教師も・・・・・・・・裏で、賭けているに違いない。
とにかく戻ってくる時間も分った事だし、と、私は今日の用事を済ませて慎吾を迎えに行く支度をした。
昼間は温かい一日だったが、流石に夕方には冬の寒さが戻ってくる。
いや、大切な慎吾を迎えに行くのに寒いなんて言ってはいられない!何と言っても、今日のこの日を慎吾があんなに楽しみにしていたのだから。
忘れずに作ったケーキを持って、私は駅へと向かった。
時間は丁度のはずだったのに・・・慎吾の姿は何処にもない。あちこち見回すと、私と同じような人待ち顔の少女がいた。
『あの子も誰かを待っているのだな・・・・・』
名前も知らない少女に、ふいに連帯感を持つ。
その時だった。慎吾がいたような気がして辺りを探せば・・・いた、慎吾だ。
嬉しくなって駆け寄ろうとした私の足は、瞬間、止まった。
どうして?という思いが私を支配する。慎吾が一緒にいるのは・・・去年卒業したはずの、原沢だ。
何が起こったのだろう。誰も知らない事かもしれないが、原沢が慎吾に好意を寄せている事に私は・・・私だけは気がついていた。
原沢が大学部に進学してしまってからは何の接点もなかったから、安心していたのに。
そうこうしているうちに、二人はどこかへ歩いていってしまう。私は慌てて後を追った。
後ろから付いて行っている間、私の心の中は慎吾への不信感で一杯になってしまった。「迎えに行く」と言った私の言葉も忘れて、原沢なんかと二人で仲良く歩いているなんて許せない・・・。
二人は公園へ行った様だ。思わず、建物の影から身を乗り出したら原沢と目が合ったように思えて私は慌てて身を隠す。
今の、あの原沢の勝ち誇ったような瞳の意味は?!慎吾は一体何をしているのだ!
原沢が、慎吾の髪を触ったとき・・・私の我慢は限界になった。
「慎吾!」
私の声に慎吾が振り返る。見られたらいけないものを見られたように・・・慌てて。
悔しかった。こんな所まで後を追いかけて来た自分自身が許せない。原沢なんかと楽しそうにしている慎吾も許せない。
私は持っていたケーキの箱を、慎吾に手渡すふりをして・・・地面に落とす。慎吾は慌てた様子だったが、そんなのは私には関係ない。
家へ向かう途中、泣きたかったがいくらなんでも外で泣けるほど可愛い性格はしていない。
我慢して、我慢して・・・・・・自室に入った瞬間。涙がとめどなく零れた。
「慎吾なんか・・・大嫌い」
私の呟きを、クマが笑って聞いていた。