2004年 2月 16日(月)

ポスター

波乱含みのバレンタインも過ぎ、これで暫くは平和な日々が送れるだろうと思っていたのに、今日学校に着いて早速嫌な物を見てしまった。
学園の至るところに張り出された『抱かれたい男コンテスト』のポスター。
 週末には張り出されていなかったから、多分日曜日、一斉に張り出したのだろう。
ポスターの内容は「挙って投票しよう」という宣伝の為のもので、今年の「白鳳マーメイド」に選ばれた祥太郎先生がポスターに使われていた。
しかも、その祥太郎先生の横に漫画に見られる吹き出しがあり、「僕も投票します」と書かれている。

はたしてこんなポスターで投票率があがるのだうか?
あまりの子供じみた宣伝に、私は頭痛がしてきた。

「祥太郎先生は知ってるんですかね・・・・」

多分この写真は隠し撮りだろう。
祥太郎先生がこんな仕事を引き受けるとは思えない。

 それに・・・・このポスターを見た直哉はどう思うだろうか・・・・・
私は重い気分同様のため息を吐き出し、教室へと向かった。



 放課後、生徒会室に行くと、子犬ブラザーズが直哉の周りでキャンキャン騒いでいた。

 「直哉先輩・・・・全部剥がしてきたんですか?」
 「何枚か持ち去られたのを、俺見ましたよ・・・」

 子犬たちの会話で、事態は読めた。
学園中に張り出されたポスターを直哉が回収してきたのだろう。

 かなり直哉は怒りが溜まっているらしい。
咲良と瑞樹に「持ち去った奴を探せ」と無理なことまで言っている。
 言われた二人は「無理です〜〜〜〜〜」と、すでに涙を浮かべている。

 私が助けに入らなければならないのだろうか・・・・・
仕方なく私が足を一歩踏み出した瞬間。

 「こんにちわぁ〜〜〜〜」

なんとも能天気に渦中の人「祥太郎先生」がやってきたのだ。

 「あれ?どうしたの?」

 「先生〜〜〜〜」

涙を浮かべている子犬たちを見て、祥太郎先生が首をちょこんと傾げた。
 祥太郎先生に駆け寄ろうとした子犬たちを蹴散らし、直哉が先生の前に立った。
事態を把握していない祥太郎先生は、不思議そうにパチクリと瞬きを繰り返す。

 「祥先生・・・・このポスターは何なんですか?」
 「ポスター?」

分かっていない祥太郎先生に、直哉がポスターを突きつけた。

 「うわっ!?何これ・・・・・」

 やっぱり祥太郎先生は知らなかったらしい。
しばらく自分のポスターを眺めた後、祥太郎先生は直哉を見上げて一言。

 「でも・・・・なんで僕がポスターに使われたからって、直哉君が怒っているの?」

祥太郎先生の言葉に、直哉は目を見開いて動きを止めた・・・かと思うと、次の瞬間怒鳴り始めた。

 「あなたって人は!!いいですか?ここは男子校です。祥先生を狙っている狼が沢山この学園に居るんですよ!!それを証拠にこのポスターだってすでに何枚か盗まれているんです!そいつらはきっとこのポスターをオカズに・・・」

キレた直哉がそこまで言ったところで、祥太郎先生がクスクスと笑い出した。

 「やだなぁ〜直哉くん考えすぎだよ。女の人のポスターなら分かるけど、僕のポスターなんて何に使えるっていうの?変なの」

いや・・・分かってないのは先生です、と私は言いたかったが、口を挟んでとばっちりを食うのは御免だ。
 私は黙って事の成り行きを見守った。

 祥太郎先生はいつまでも笑っているし、子犬たちはオロオロと直哉と祥太郎先生を見比べている。


 「もういいです・・・・・」

結局直哉は怒りを通り越し、諦めの境地に陥ったらしく、ため息を吐くと、祥太郎先生に背を向けた。
 
 しかし、その後の直哉の行動に、私は思わずチェックを入れてしまった。
回収したポスター全てを纏めると、直哉は自分の荷物と一緒に置いたのだ。

 「直哉・・・・そのポスター持って帰ってどうするんですか?」

私の言葉を聞いて直哉の身体がギクリと強張った。

一番性質の悪い狼は直哉ではないだろうか・・・・・
その場に居た全員がきっと同じ事を思ったに違いない。