2004年 2月 17日(火)

子犬ちゃん’S 救出!

 いよいよ迫る「抱かれたい男」の投票日。
 昨日のポスター事件を機に、校内は一層騒がしさが増したような気がする。

 バレンタインも終わってしまって、後は学期末試験までまっしぐら。「抱かれたい男」以外に楽しいイベントもないのだろうから気持は分らなくも無い。が・・・このふざけたイベントは今回限りで止めさせる!と私は握りこぶしを作ってみた。

 理由・・・?昨日はあの後、結局子犬ブラザーズは直哉のおつかい、じゃなくて・・・直哉の号令の元、ポスターを剥がした生徒を探す羽目になってしまったのだ。
 可哀想に・・・。私がいれば、そんな事はさせなかったのにっ!

 昨日は・・・昨日の放課後は仕方なかったのだ。なんたって、慎吾からデートのお誘いがあったのだから、断れる筈が無い。
 
 生徒会室の皆が見ている前で『天音〜、今からでぇとしよっ!なぁ?俺、今どうしても天音とでぇとしたいんや〜』と、大きな図体で懐かれてしまっては・・・。
 いや、嬉しかったのは嬉しかったのだが。
 で、結局、咲良や瑞樹に冷やかされながら嬉し・恥かしのデートに行ったまでは良かったが。

 直哉め、私がいなくなるのを待っていたのだな!おまけに、慎吾を使って私を排除するなんて!!!許せない!!!!!

 そう、デートと言って張り切っていた割には慎吾のエスコートは何だか不自然で。普段、慎吾から言い出すデートは何かしら、街中に慎吾の興味の惹かれる物がある時が多いのに。
 昨日は目的がある訳でもなく、ただふらふら〜と彷徨うだけだった。
 
 もちろん、そんな慎吾の嘘に私が気付かない訳が無い。キス一つで、全て白状させてあげましたとも・・・・・。

 全く、直哉ときたら!私がいなくなったのを見計らって子犬たちに『ポスター剥がした奴、全員連れて来い』だなんて・・・。
 やっぱり、昨日の直哉の発言を聞いたときに、シメておくのでしたね。
 それでも子犬たちがいくら頑張った所で全ての回収は無理だとは思います・・・。(恐らく、咲良は雪紀に・・・瑞樹はカノンに助けを求めたはずですが)

 今朝の子犬たちは何だか妙に元気がなくて、私は昨日の失態を取り戻すべく行動に移った。

 まずは私の親衛隊を一人、捕まえる事から始めましょうか・・・もちろん、顔には憂鬱そうな表情を浮かべて。

 「あ・・・・・天音様!?どどど、どうかなさったのですか・・・?」
 まず、一人・・・こうも簡単にひっかかるとは。
 「ああ・・・貴方は確か・・・3年の・・・・・・。実は・・・・・いえ、大丈夫です。これは私の問題ですから・・・」
 言いかけて、止めるのもまた、テクニック。
 「そんなっ!天音様にそんなお顔は似合いません!!!何か、何かお困りになっている事があるのでしたら是非、この俺にっ!!!」
 どうして、こんなに簡単なのでしょう・・・。たった一人の親衛隊が大きな声を出しただけでいつの間にやらその後ろにはあっという間に親衛隊の黒山だかり。
 私は意識して、集まった全員を見渡した。もちろん、憂いを含んだ眼差しで。
 「皆さんが、そうおっしゃってくれるのでしたら・・・。実は昨日のポスターの件で・・・」
 後は簡単。あのポスターが生徒会の許可なく張り出されたものである事。モデルが祥太郎先生で、尚且つ本人の了解を得ていない事。そしてその事で先生が悩んでしまっている事、等等。
 
 口から出任せ、嘘八百。けれど私が言う事は親衛隊には神の啓示のように聞こえるらしい。
 「あのポスターが回収出来なければ・・・私達は、いいえ・・・私は無能者、と何代もの生徒会に言い伝えられてしまうでしょう・・・」
 とどめに、涙をキラリ。

 「おおお。お任せください!天音様が無能なんてとんでもない!そんなポスターを張り出した奴らが悪いのです!俺達が、命に代えても、必ず取り戻してきますから!」
 その言葉に、私は驚いたように目を見開き・・・・・・そして少々の笑顔を。これが効果テキメン。

 うおおおおおおおおお〜、という雄叫びと、ずどどどどどどどどど・・・・という地響きを残して親衛隊が散って行く。
 後は、待っていれば向こうから勝手にポスターは集まってくるでしょう。ええ、一枚残らず・・・・・

 これで子犬たちも、直哉の無理な我侭に振り回されなくて済みますね、と私はひと息ついた。

 「・・・・・・なんやねん、あれ」
 けだるそうな声がするので振り向くと、慎吾が不貞腐れたように立っていた。
 どうも、親衛隊相手に芝居をしていたのを一部始終見ていたらしい。
 「まったく・・・ちょっと目ぇ離すと、これやもんなぁ・・・。俺以外に、あないな笑顔見せたらいかんやないか・・・」
 慎吾がぶつぶつと呟いている。ああ、ほら・・・見る間に大きな耳もしっぽも垂れ下がってしまって・・・。
 「慎吾?仕方ないでしょう。昨日のデートの代償だと思ってくださいね?」
 一応、釘は刺しておく。
 「せやけど・・・・・・・・」
 口を尖らせた慎吾がまだ文句のありそうな顔で私を見ている。
 「もう、授業が始まってしまいますから・・・・・後は、お昼休みにでもゆっくりと・・・、ね?」
 慎吾の頬に手を掛けて、軽くキスをしてあげると・・・見る間に慎吾の機嫌が直る。
 「ほんまか!?ほんまに昼休みやな!?うわ〜ガッコでなんて久しぶりやん〜、なんや燃えるなぁ、俺〜」
 
 はいはい、勝手に燃えていて下さい・・・慎吾。
 
 何はともあれ、子犬ブラザーズの救出には成功する事でしょう。