2004年 2月 25日(水)

頑張れ・・・咲良・・・・・

 「なんですか?天音さんに・・・・直哉さんまで・・・・」

こっそりと咲良を手招くと、咲良は不思議そうな顔をしながらも付いてきてくれた。
 それに、私と直哉が一緒にいるのが不思議でならないらしい。

 「咲良・・・・・これから話すことは、咲良にしか頼めないことです」
 「これは女子部との交流を深めるための重要な仕事だ」

真剣な顔で言う私と直哉を見て、咲良がゴクンと唾を飲み込んだ。

不安そうにしている咲良の背を押して、私と直哉は女子部の子を待たせてある教室へと入る。

 「お待たせしました・・・・彼が協力してくれる花本咲良くんです」

 「あ・・・・こんにちわ・・・・宜しくお願いします」

女の子に咲良を紹介すると、彼女たちはペコリと頭を下げた。
そして、咲良を見てヒソヒソと「可愛い・・・・」とささやき合っている。

そんな彼女たちを見て、益々咲良は首を傾げて、私を見上げてきた。

 「何なんですか?」
 「ああ、実は・・・・・・・・」

そこから15分ほどかけて、私は咲良に女子部で行われる「ミュージカル」のことを話してやった。
そして・・・・そこに雪紀を出演させたいと・・・・・・・

 「天音さん・・・・・・・それは無理なんじゃ」
 「分かってます。雪紀は嫌がるでしょう・・・・でも、そこを口説くのが咲良の役目です。」
 「お前しか出来ない・・・・俺や天音が出ても意味が無い。雪紀が出てこそ、交流が深まるってもんだ」

 逃げ腰の咲良を捕まえると、私と直哉は畳み掛けるように咲良に言う。

 「咲良・・・・やってくれますよね?」

私は咲良の頬を両手で包み、至近距離でにっこりと微笑む。
 すると咲良は、まるで蛇に睨まれた蛙のように固まった。

 「やってくれますよね?」

もう一度ねんを押して言うと、咲良は小さく「はい・・・・」と答えてくれた。

(応えざるをえない・・・が正しい表現かも知れないが・・・・・・)

心配そうに私たちのことを見守っている女子部の子を振り返ると、私は艶然と微笑んで見せた。

 「咲良が・・・・生徒会長に頼んでくれるそうです。大丈夫。咲良が頼めば会長は必ずOKしますから。どうせなら、もう宣伝しても構いませんよ」

 「本当ですか?ありがとうございます。早速宣伝ポスターを作ります!!」

彼女たちは嬉しそうに頬を染め、何度も頭を下げて去っていった。


 「おい・・・・いいのか?宣伝して良いなんて言って・・・・」

扉が閉まると同時に直哉が苦い顔で言う。

 「大丈夫ですよ・・・・雪紀が咲良のお願いを聞かないわけないでしょう?」

 「ね・・・咲良」と私が咲良を振り返ると、咲良は涙ぐみながら頷いた。

 「はい・・・・俺頑張ります・・・・・」

なんだか咲良をいじめているような気がしないでもないが、私はあえてそこは目を瞑る。
全ては雪紀が悪い。

恨むなら雪紀を怨んでください・・・・と心の中で咲良に呟いた。