2004年 2月 7日(土)

ゲーセン

 思いがけず、咲良は甘味屋を堪能してくれたらしい。私オススメの餡蜜と緑茶のセットをにこにこして食べていた。
 外では未だに雪紀を筆頭に暇人が待ち構えているのだろう。店内に入ってくる客が首を傾げながら入り口の方を見ているので、外に居る雪紀たちの様子が分ってしまう。
 あの、雪紀の事だ。一体どれほどイライラして私と咲良が出て行くのを待っている事だろう。
 その姿を想像するだけでも、私は楽しくなってしまう。目の前では可愛い咲良が「おいしいです〜♪」なんてにこにこしているので尚更だ。
 咲良とデートするのは存外、楽しいかもしれない。

 
 「さて、咲良。次は何処に行きましょうか?」
 食べ終わってお茶を飲んでいる咲良に聞くと、咲良は考え込んでしまった。恐らく、私と何処に行けばいいのかわからないのだろう。

 「どこでもいいんですよ?本屋に行きますか?それともお買い物でもいいですし・・・映画でも、ゲームセンターでも・・・」
 「えっ!?」
 
 私が全て言い終わる前に、咲良が反応した。どうやらゲームセンターと言う言葉に反応したようだ。

 「咲良が行きたいのなら、行きましょうか?」
 「いいんですか?天音さん!!」

 咲良がきらきらと目を輝かせて私を見つめている。・・・可愛い・・・とても、可愛らしい。

 私の奢りで甘味屋を出ると、近くの店屋の角に隠れるようにしてこちらを伺っている一団に気が付いた。あれで彼らは隠れているつもりなのだろうか?と思いながらも素知らぬふりで私は咲良と連れ立って歩き出した。
 何分もかからずに、咲良お目当てのゲームセンターへ辿り付いた。
 あちこちに、同じような学生がたむろしている。
 ふいに雪紀を伺うと、眉間に皺を寄せてこちらを睨んでいた。

 しかし、咲良はそんな雪紀の様子に全く気付いていない。
 真剣に、ゲームセンターの中を見回している。その姿はまるで何か美術品に感動しているようだ。

 「咲良・・・?何をそんなに真剣になっているのですか?ゲームセンターなんて珍しい所でもないでしょう?それこそ、雪紀と来た事くらいあるでしょうに」
 「ないです!」
 しかし私の言葉は力一杯、否定されてしまった。
 「は?」
 「だって・・・雪紀さんはこんな所は人間の来るところじゃないって、一度も付いて来てくれた事なんてないです。俺、憧れていたんですよ〜。あっ!天音さん!あの人形!あのパンだのやつ!!俺、欲しかったんです〜!!!」
 言うが早く、咲良は一台のクレーンゲームに走って行ってしまった。

 ・・・・・成る程。雪紀は咲良を連れて来ていなかったのか。それであの眉間の皺の理由がわかったぞ。
 ふふっ、又しても雪紀の嫌がるツボにヒットしたらしい。

 咲良は「あっ!」とか「うわっ!」とか言いながら、パンダを採るのに躍起になっている。仕方が無い、そろそろ私が助けてあげるとするか。
 
 もう一度、雪紀の方をさぐれば益々深い皺を刻んだ姿が目に入って来た。もう少し、嫌がって貰いましょう、と思い視線を戻せば他のクレーン機にしがみ付いている慎吾の姿を見つけてしまった。・・・・・・それは見なかった事にしておこう。