| 2004年 3月 1日(月) |
命名式
「ジャンジャジャーン!発表しま〜す!」
突然、大きな声が生徒会室の中に響いた。一体誰がそんな大声を、と思い振り返るとそこには祥太郎先生が立っていた。
手には習字で使う細長い紙を持っている。さすが、国語教師・・・中々に達筆だ。
「名前が決まりました〜。・・・太郎くんです!」
・・・名前?何の???と私の頭の中を疑問符が埋め尽くす。そうか、あの猫の名前か!
私は、祥太郎先生に猫を引き取って貰った事をきれいに忘れていたようだ。いや、余りにも嫌な事だったので、脳が記憶するのをこばんだのだな、きっと。
折角、私の為に子犬コンビが計画してくれた誕生会だったがあまり後味は良くなかった。にっこり笑って「ありがとう」と言ってやりたくても、どうしても猫は嫌なのだ。
それでも祥太郎先生が引き取ってくれる事になり、子犬コンビも機嫌を直したし・・・何より、当の祥太郎先生が嬉しそうだった。
あの後、直哉が付き添いで猫の為の道具を揃えに行ったらしい。予防注射や健康診断は瑞樹の父上がきちんとしていてくれたらしい。
その猫の名前が・・・太郎。
「わ〜、先生。名前決まったんですね!」
「太郎君ですか〜、何だか・・・犬の名前みたいだけど・・・先生が決めたんだからいっか〜」
案の定、子犬コンビが大きく黒々と墨で書かれた名前を見て騒ぎ出した。
「なんや〜、あの子猫オスやったんですか〜。けど、何で太郎なん?」
慎吾まで興味津々の様子だ。
「え〜、だって・・・僕が祥太郎だから、あの子は太郎。ね、兄弟みたいでしょ?」
安易だ・・・余りにも安易過ぎて私は目眩がした。しかし、咲良と瑞樹の行為を無駄にしてしまった私には意見を言えるはずもない。
ちらり、と見れば祥太郎先生の後ろに控えている直哉も心なし頬が引きつっていた。
「ね〜、見て見て♪直哉君が、記念にって買ってくれたんだ〜。太郎に凄く似合うと思わない?!」
祥太郎先生は興奮気味に手にした携帯を子犬コンビに見せている。
「本当!赤い首輪が似合いますね〜」
「小ちゃくて、可愛い〜」
携帯で撮られた写真を見て、きゃっきゃ、きゃっきゃと二人は喜んでいる。
「ね〜、本当に可愛いよね♪昨夜は抱っこして寝ちゃったんだ〜。物凄い甘えん坊で、抱っこしてあげるとゴロゴロ言って、凄い幸せそうなの〜」
にこにこ、にこにこ・・・。確かに、祥太郎先生もいつになく幸せそうだ。
祥太郎先生と子犬コンビは時間の経つ事なんて関係なく、猫の事で盛り上がっている。
その後ろでは・・・直哉が面白くなさそうに不貞腐れていた。
・・・仕方ない、私は本当に猫が苦手ののだから。