| 2004年 3月 10日(水) |
おばあさま・・・・ナイスです。
明日から試験が始まる為、今日は真っ直ぐ帰宅した。
私は日頃きちんと授業を聞いているので、今更焦らなくても大丈夫なのだが、一応さらっと復習位しておこうと思ったのだ。
家に着いて、自室に入り、私は違和感を感じた。
部屋の中が荒らされているとかそういう訳ではないが、何かが違う。
私は部屋の中をゆっくりと見渡して、原因を見つけた。
誕生日に慎吾がくれた「梅ノ木の枝」が無くなっているのだ。
走ってきた慎吾の手に握られていた梅の枝は、荒い扱いで花を全て散らしてしまい、丸坊主な状態だった。
花の付いていない枝はとても寂しく、飾れるような物ではなかったが、慎吾の気持ちが篭った枝を、私は捨てる事が出来ず、取っておいたのだ。
机の上に一輪挿しを置き、そこに挿しておいたのに、なくなっている。
朝部屋を出るときは確かにあった。
誰かが部屋に入り、捨ててしまったのだろうか?
私は真相を確かめる為に部屋を出て、母親を探した。
「出掛けてるんですかねぇ・・・・・」
どこにも母の姿は無く、帰ってきたら聞いてみようと、廊下を歩いていると、おばあさまが部屋から顔を出した。
「ちょっと天音さん・・・・こっちへ」
「なんでしょう?」
手招かれ私はおばあさまの部屋へと入った。
「これ・・・・・どうかしら?」
「こ・・・これは・・・」
おばあさまが差し出した物を見て、私は少し驚いた。
今私が探している梅の枝が、私の目の前に差し出されているのだ。
しかも、丸坊主だった枝に、ピンクの可愛らしい花が付いている。
「おばあさま・・・・これ・・・・」
「ごめんなさいね、辞書を借りたくて天音さんの部屋に入ってしまったのよ。そしたら、机の上にこの枝を見つけて・・・・何だか寂しそうだったから、花を付けて差し上げたのよ」
そう言って差し出された枝を受け取り、花をよく見ると、それはよく出来た造花だった。
多分、おばあさまが造ってくださったのだろう。
「ごめんなさいね、天音さん、勝手な事をして・・・気を悪くされたかしら?」
何も言わない私に、おばあさまは申し訳なさそうに頭をさげた。
「いいえ、おばあさま。とっても嬉しいです。ありがとうございます。大事にしますね」
私は慌てておばあさまにお礼を言った。
私の為に、一生懸命作ってくれたのだ、嬉しくない訳が無い。
よく出来た梅の花は綺麗で、香りさえ有りそうで、私は思わず花に顔を寄せる。
「まぁ・・・天音さん、匂いはしなくってよ」
おばあさまはクスクス笑っている。
私も微笑むと、この梅の枝の話をおばあさまに聞かせてあげた。
「あのね、おばあさま、この枝は慎吾がくれたんですよ・・・・・・」
結局私は勉強もせずに、おばあさまの出してくれた梅茶を飲んで、慎吾の話題で盛り上がったのだった。