2004年 3月 11日(木)

嫌な予感…

今日はテストにはもったいないようなよい天気だ。
朝方には突風のように吹いていた風も収まり、うららかな陽気になった。
本当に、こんないい日に教室の中に閉じ込められているなんて、なんと理不尽なのだろう。

こんなことをつらつら考えられるのも、得意科目の余裕かもしれない。
今日は4教科テストがあったが、いずれも私には楽勝だった。

特に2時間目の現国のテストは楽だった。
3回見直しをして、暇つぶしに最後の「感想文を書け」という出題に、嫌味を込めてびっしり裏まで感想を書きまくってもまだ時間が余った。
私は頬杖をついた。これ以上見直すと、手がシャーペンの芯で真っ黒になってしまう。

テストのために席替えをして、私の席は窓際になっていた。
毎日こんなに日が当たるのでは日焼けをしてしまうので嫌だが、たまにならこんな陽だまりの席もいい。
窓の外にはまだ花も葉もつけない木立が、それでもなんとなく華やいで見える。
通学路の見事な桜並木が開くのも間近だろう。

あまりに暖かいのでふわりと身体がほどけていきそうな気がする。
眠ってはいけないと思いながら、私は目を瞑ってしまう。

後ろの席は、以上に筆圧の高い奴で、カツカツとシャーペンが机を叩く音が規則的に聞こえる。
一定のリズムでポキリという音もする。緊張して芯を折りまくっているらしい。
その単調な音が、私をますます油断させる。



慎吾が泣きそうな顔をしてテスト用紙に向かっている。
見ると、あと10分しか時間がないのに、ほぼ白紙だ。
一体何をしているのだ…。私が覗き込むと、慎吾は情けない顔を上げた。

「天音〜、いくら頑張っても書けへんねん。」

よく見ると、慎吾の手元には無数の折れたシャーペンの芯が散っている。
慎吾がシャーペンを紙に乗せるたび、ポキリポキリと軽快な音を立てて、芯が折れていくのだ。

「何をやっているんです。もっとそっと書きなさい。」
「んなこと言うたって、ぎゅっと書かな、色つかへんもん。」

慎吾は困り果てた顔をしてもう一度紙に芯を押し付けた。
パキッと鋭い音がして、シャーペンの本体が折れた。

「何をしているんです!」
「うわあ〜、これで書けへんかな〜!」

慎吾は折れたシャーペンの先を紙に押し付けた。紙の上から数センチのところがまた折れる。
慎吾は懲りずにばきばきとシャーペンを折っていって、最後には後ろにつける消しゴムだけしか残らない。
「のおお〜! これじゃ絶対書けへん!」
「落ち着きなさい、私のペンを貸してあげますから…!」



「あの、天音さま、解答用紙を…。」
気が付くと、クラス委員が困り果てた顔をして私を覗いてた。
私は我に帰った。あまりのうららかな陽気に、つい私としたことが眠り込んでしまったらしい。
それにしても………なんて夢だ!

私は解答用紙を委員に渡した後もドキドキと嫌な予感を隠せない。
あの夢はまさか、予知夢…?
いや、夢は逆夢と言うし…。とにかく慎吾の身に悪いことが起こっていないことを祈ろう。