| 2004年 3月 18日(木) |
祥太郎先生が・・・・・
今日も祥太郎先生の篭絡が上手くいかず、落ち込んでいると、ゲレンデに出ていた咲良が頬を真っ赤にして戻ってきて、私と瑞樹に声を掛けてきた。
「天音さん、瑞樹、折角なんだから外に出ましょうよ!」
「咲良・・・私は温泉を楽しみに来たんですから、良いんです」
「俺も・・・・スキー出来ないし」
私と瑞樹の冷たい返答に咲良が不満の声を上げた。
「えーーーーっ少しは雪と戯れましょ!皆で雪合戦しようって言ってるんです」
「雪合戦」なんて・・・・高校生にもなってやる事ですか?
そう思った私は、取り合えず無言で咲良を見つめた。
「雪合戦かぁ・・・・それならやりたい!天音先輩!面白そうだから行きましょ!!」
私同様、寒さを嫌っていると思っていた瑞樹が、咲良の提案に食いつき、私は眉を寄せた。
「いや・・・私は遠慮・・・・」
「さ、行きましょう!!」
断りの言葉半分で、私は咲良と瑞樹に両脇を固められ、あれよあれよという間に、真っ白な銀世界へ連れ出された。
「寒い・・・・肌が荒れる・・・」
私が寒さに震え、縮こまっていると、慎吾が駆け寄ってきた。
「天音〜寒いんやったら、動いた方がええで。動けば温かくなんねん」
太陽を背に、白い歯を光らせ慎吾が言う。
「・・・・・・・」
私は寒さで口も開けない。
横を見れば、咲良と瑞樹が雪まみれになってはしゃいでいた。
やっぱりあの子達は子犬ですね。
そうこうしていると雪紀たちも滑り降りてきて、全員がそろった。
「じゃ、組み分けしよう。グーとチョキで分けましょう」
咲良の掛け声を合図に、全員が手を出す。
「はい。決定〜」
組み分けは「雪紀・直哉・咲良・カノン」「私・慎吾・祥太郎先生・瑞樹」という微妙な分かれ方になった。
5メートル程離れ、雪で簡単な壁を作り、雪合戦がスタートした。
「俺と瑞樹で攻めるから、天音と祥太郎先生は雪玉を作ってな」
「沢山作ったら僕も投げていいかな?」
祥太郎先生はウキウキしているのか、目を輝かせて慎吾に言っている。
「おう。オッケーやで。ほんじゃ、ガンガン攻めるでぇ〜」
慎吾は意気揚々と雪玉を投げ始めた。
瑞樹もきゃきゃ言いながら、楽しそうに雪を投げている。
私は祥太郎先生と一緒にせっせと雪玉を作る。
数個積み上げたところで、ふと祥太郎先生を見て、私は目を見張った。
「せ・・・先生?何をしてらっしゃるんですか?」
「えっ?」
先生は雪玉の中に「小石」を入れていたのだ。
「そんな物入れたら危ないじゃないですか!?」
「え〜〜〜〜?昔友達に教えてもらったんだけど・・・・国見くんは入れなかった?」
「入れません。」
きっぱり言い切ると、先生は「つまんないの・・・」と渋々小石を取り除き始めた。
祥太郎先生が益々分からなくなってきた。
普通常識で考えて分かることだろう?
その後、ある程度の雪玉を作り上げた祥太郎先生は、嬉々として雪合戦に混ざる。
「祥太郎先生!直哉を狙え!」
「ラジャー」
先生は慎吾の指示通り、直哉を攻撃し始める。
先生の玉を直哉が避けるわけがないという慎吾の読みは当たり、直哉は面白いくらい雪まみれになっていた。
それを見ていた雪紀と咲良がキレ、気が付けば陣地も関係なく、皆雪まみれになってしまった。
特に小さい咲良と瑞樹と祥太郎先生は頭の先から、服の中まで雪まみれで、見ている私の方がしもやけになりそうだった。
「は〜おもろかったなぁ・・・・咲良、瑞樹、次は風呂や。」
日暮れまで雪と戯れ、ロッジに帰った途端、慎吾が咲良と瑞樹を温泉に誘った。
「男同士、背中を流し合うのもええやろ」
「そうですね!!」
すっかり親分気分の慎吾に、咲良も瑞樹も何故か同意し、三人は風呂に向かった。
「何故慎吾が咲良と風呂に入るんだ・・・・・」
雪紀の、地を這うほど低い呟きが聞こえたが、私は聞こえないふりをする。
「僕も入ってこようかな・・・・冷えちゃったみたい」
私と雪紀の一即触発な雰囲気を壊すように、祥太郎先生がのんびりとした口調で言い残し、去っていった。
「祥先生・・・・・」
直哉が悔しそうに呟いた。
そして私を恨めしそうな目で睨む。
やばいここにいたら、2人から慎吾を何とかしろと責められてしまう。
私は早々に寝室に逃げ込んだ。
それから数分後、冷えたからだを熱いお茶で暖めていると、慎吾の私を呼ぶ声が聞こえ、リビングへ向かう。
「どうしたんですか?」
リビングのドアを開けると、そこには、バスタオルを腰に巻き、祥太郎先生を担ぎ上げた慎吾がいた。
「先生が風呂で倒れた・・・・」
「早くそこへ」
祥太郎先生をソファーへ寝かせ、様子を伺う。
「先生?大丈夫ですか?」
「ん・・・ごめん・・・・なんか急にクラクラしちゃって・・・」
「のぼせたんですかねぇ・・・・」
「んー・・・熱いけど寒い感じ・・・直哉くん、僕部屋に行って寝たい・・・」
そう言うと祥太郎先生は心配そうにしている直哉に向かって手を伸ばした。
直哉は私をどけると祥太郎先生を抱き上げ、寝室へと連れて行く。
「なんや・・・先生はちゃんと直哉のこと好きなんちゃう?」
その姿を見送る私たちの横で、慎吾がポツリと呟いた。
結局、祥太郎先生は風邪をひいたらしく、その晩高熱を出した。