| 2004年 3月 2日(火) |
忙しい日々の始まり
3月5日、今週の金曜日は「卒業式」が控えている。
もちろん、生徒会はその準備に追われ、忙しい。
しかし、その二日後の日曜日には、女子部のミュージカル発表が待ち構えている。
お陰で、雪紀は歌の稽古に励んで(?)いる為、生徒会の仕事を一切しないと言い出した。
その負担が全て直哉に降りかかり、直哉は食事も取れないほど、走り回っている。
私と慎吾は「文化部長」と「運動部長」なので、本来仕事はない。
しかし、今回ばかりはそうも言っていられない。
直哉ばかりに負担を負わせたら、私の心が痛むのだ。
雪紀をミュージカルに貸し出したのは、私にも責任があるからな。
私は疲れたように座り、書類を見つめている直哉の肩を叩くと、手伝いますと伝えた。
「天音・・・・さんきゅ・・・」
普段表情を崩さない直哉が、珍しく弱った笑顔を見せた。
私は少しだけ「ドキッ」とした。
憔悴の色を浮かべた直哉の顔はセクシーで・・・・・
最近の直哉は、少し人間らしくなってきたように思う。
それは多分・・・祥太郎先生、「恋」の力だろうか。
私はお返しににっこり微笑み、以前より付き合いやすくなった友人のために、手を貸すことにした。
一方の瑞樹は・・・・カノンが卒業するから、落ち込んでいるんじゃないだろうかと思い、瑞樹を見るが、お気に入りのソファーに座り、
楽しそうに電卓を叩いていた。
「瑞樹は・・・意外と元気ですね」
「カノンは大学部に進むから、寂しくないんだって」
ぽつりと呟いた私の独り言に、側にいた咲良が教えてくれた。
それに、大好きなカノンの卒業式だから、すばらしい式にして、カノンを送り出したいと、頑張っているそうだ。
瑞樹も大人になった・・・と感心していると、直哉が私のところにやってきた。
「天音・・・・お願いしたいことがもう一つあった」
「なんですか?」
「雪紀が読む予定の送辞の原稿を書いてくれ」
「はぁ!?」
私は自分の耳を疑った。
雪紀ならそんな原稿書かなくても、その場で適当にこなせるだろう。
私の考えていることが分かったのか、直哉はため息を吐いて、言葉を続けた。
「雪紀なら、当日適当に出来るだろ?って俺も言ってみたんだが、自分はミュージカルで頭がいっぱいでそれどころじゃない、と言い張って・・・・・それが嫌なら俺に送辞をやれと言い出す始末で」
「なるほど・・・・雪紀のささやかな反抗ですか・・・・」
どこまでも私とウマの合わない奴だ・・・・
「いいでしょう・・・・書きます。最高に泣けるような文章をね」
私は原稿用紙を受け取り、最高の送辞を書くべくペンを走らせた。
「そういえば・・・慎吾は?」
ペンを止め、視線を巡らすと、窓際の私の特等席で、お菓子に囲まれ、ゲームに熱中している慎吾がそこにはあった。
みんなが忙しく働いている中、慎吾だけはのうのうと遊んでいる。
私がわずかばかりの殺意を慎吾に感じるのだった。