2004年 3月 24日(水)

おばあさまの為に?

 「・・・というわけで、折角のお花見ですから、何か一つかくし芸でも・・・・」
 「くだらん。何故俺がそんな事しなきゃならんのだ」

 早速私が提案すると、即座に雪紀に却下された。

 学園は春休中だが、入学式の準備で、私たちは度々学園に集まっていた。

 「天音先輩のおばあさんが来るんですか?」
 「はい。お弁当を作ってもらうし・・・良いですよね?」

横でパソコンを操作していた瑞樹が顔を上げ、私に尋ねる。

 「俺は全然かまいません!むしろ大歓迎です。うちおばあちゃん居ないから、嬉しいです」
 「俺もー、天音さんのおばあさん大好き」

完全におばあさまの人柄とご馳走に飼いならされた、子犬たちは大喜びで騒いでいる。

 「でも・・・なんでかくし芸?」

祥太郎先生が顎に指を当て、ちょこんと首を傾げる可愛らしいポーズで呟いた。

 「私が花見の席で舞を披露する事になったんですが、私の舞だけじゃ面白くないでしょう?だから皆さんにも何かやっていただこうかと思ったんですけど・・・・」


 「別にお前の舞だけで十分だろう・・・・」

あくまでも何もしたくないらしい雪紀は眉を顰めて、手にしていた書類を放り投げた。

 「せやけど、おもろいんちゃう?花見なんてお祭り騒ぎやし。俺は何しようかな・・・」
 
お祭り騒ぎの大好きな慎吾は、やる気満々で腕を組んで考え始めた。

 「慎吾・・・・くれぐれも下品な事は止めてくださいね。おばあさまがいらっしゃるんですから」

私は慎吾に向かって釘を刺しておく。

 昔教室でクラスメートに乗せられて、芸を披露していた慎吾を思い出したのだ。

 あれはこの学園に入学して間もない頃、大阪人なら皆を笑わせろと、理不尽な事を言われた慎吾が、任せろとばかりに教卓の上に上り、下着ごとズボンを脱いだ。
その直後、自分の大事なイチモツを股に挟み・・・・・

 「女の子ぉぉぉぉぉぉぉ」

と、雄たけびを上げたのだ。

見ていたクラスメートはあまりの低レベルさに言葉を無くし、教室の中がしーーーーんと静まり返ったのだが、そのくだらなさに直後、爆笑の渦に包まれた。
 その後も嫌がる生徒の頭の上にイチモツを乗せ、「ちょんまげ」と言ってみたり・・・・・・

 とにかく最低な芸を披露していた。

私のおばあさまの前でそれをやられてはたまらない。

 「慎吾・・・もし下品な芸を見せたら、うちには出入り禁止にしますから」
 「えーーーっそんな・・・分かった・・・・下品なことはせーへん」

早速下ネタを考えていたのか、慎吾は非難の声を出したが、出入り禁止と聞いて、考えを改めたらしい。

 「それなら、咲良、瑞樹、俺たち三人でコントしよーや」
 「いいですね」
 「ネタは慎吾先輩が考えてくださいよ」

結局慎吾は子犬たちを巻き込んでコントをするらしい。

 「さて・・・先生も何かしてくれますか?」
 「んーーーーそうだねぇ・・・じゃ僕はマジックでもしようかな」

意外と乗り気な先生は、目をキラキラさせて言う。
 トロい祥太郎先生の手品・・・・ある意味楽しみだ。

 「祥先生・・・俺、アシスタントしますよ」
 「ええっアシスタントが付くなら、凄い事しなくちゃね・・・・」

ここぞとばかりに便乗してきた直哉の提案に、祥太郎先生が言う。

 「ふん・・・・俺はやらんぞ・・・」

盛り上がる私たちの横で、雪紀だけつまらなそうに眉を寄せていた。

 まったく・・・本当に雪紀は可愛くない男だ。