2004年 3月 28日(日)

花見日和その��

今日はいよいよ、待ちに待った(?)花見開催日。
私は朝から豪華なお弁当を作ってくれたおばあさまと共に家を出る。

 今日のおばあさまは桜の花をあしらった薄桃色の着物を着ている。
私も舞いを披露する手前、若草色の着物を着て、学園へと向かった。

 荷物も多いので、途中でタクシーを拾って学園に着くと、校門の前で咲良と瑞樹が待っていてくれた。

 「天音先輩、おばあさん、おはようございます」

瑞樹がにっこりと笑って挨拶すると、おばあさまは嬉しそうに微笑んだ。

 「あらあら、咲良さんに瑞樹さん、この度はお招きいただきありがとう・・・」
 「俺、荷物持ちますよ!」

咲良も嬉しそうに微笑むと、私とおばあさまの荷物を持って先を歩き出した。

 「こちらですよ・・・」

私はおばあさまを促し学園内へと歩き出した。



 「おお〜天音、おばあさん、いらっしゃ〜い」

校舎の裏手の大きな桜の木に着くと、慎吾が駆け寄ってきた。

 「おっ・・・これが今日のご馳走やな・・・・」

咲良と瑞樹が持っている風呂敷包みに顔を寄せ、犬のように鼻をヒクヒクさせている慎吾に、子犬たちが抗議の声を上げた。

 「慎吾先輩、もっと離れてください」
 「慎吾さんの涎が付いちゃうじゃん」
 「うわ〜お前ら酷いなぁ〜」

慎吾から包みを遠ざけ、子犬たちは慎吾に舌を出してみせた。

 「まあまあ、慎吾さんはそんなにお弁当を楽しみにしていてくださったの?頑張って作った甲斐がありましたわね」

おばあさまは慎吾たちのやりとりを見て、楽しそうにコロコロと笑っている。

 「おはようございます!国見くんのおばあさまでいらっしゃいますね?」
 「あら・・・可愛らしい・・・」

背後から突然声を掛けてきた祥太郎先生を見て、おばあさまが呟く。
 緊張しているのか、頬を真っ赤にして挨拶する祥太郎先生が、おばあさまの可愛い物好きセンサーに引っかかったらしい。

 「私、生徒会の顧問をしています、朝井祥太郎と申します。」

大きな声で自己紹介すると、祥太郎先生はペコ〜と深く頭を下げた。

 「あらまぁ・・・可愛らしい先生ですのね・・・・どうもうちの天音さんがお世話になっているようで・・・」

おばあさまも頭を下げ、それを受け祥太郎先生がまた頭を下げ・・・・・・・・

暫く2人はこめつきバッタのように、頭を下げあっていた。

 「全員揃ったようだな・・・」

雪紀と直哉が飲み物の入った袋を提げて戻ってきて、いよいよ生徒会の花見が始まった。


 「あっ・・・・ちょっと君たち!それお酒でしょ?」

早速乾杯をしようとしたところで、祥太郎先生が目ざとく注意をする。

 「まあまあ、先生〜ええやん、今日くらい無礼講ってことで・・・な?」
 「でも・・・・ここは学校だし、僕は教師だよ、見逃せません」
 「先生・・・いいじゃありませんの」

慎吾と祥太郎先生が押し問答をしていると、おばあさまが割って入った。

 「若いうちに色々経験しておいたほうが良いですし、それに、男の子は多少やんちゃな方がいいじゃありませんか」
 「でも・・・・・・」
 「今からお酒に免疫をつけておいた方が、社会に出た時に色々役に立ちますわよ」

そう言っておばあさまははんなりと微笑んだ。
祥太郎先生もその笑顔には敵わないらしく、渋々両手を上げて降参のポーズを取った。

 「分かりました・・・今日の事は目を瞑りましょう」
 「ホホホホホ、そうですわよ、じゃあ、私と先生で秘密ということで・・・。秘密って何だか素敵な響きですわよね」

 「ほんなら、気を取り直して乾杯や〜それではかんぱ〜〜〜〜〜い」

慎吾の大きな掛け声で、皆で缶ビールを掲げる。

 ビールで喉を潤して、早速おばあさまのお弁当を広げ、皆で堪能する。
お腹も膨れ、程よく頬が火照り始めた頃、慎吾が立ち上がって場を仕切り始めた。

 「え〜〜〜それでは、これよりかくし芸大会に移りたいと思いま〜〜〜〜す」

おばあさまも楽しそうに手を叩いて、場を盛り上げる。

 「それではまず初めに、俺と咲良と瑞樹でお笑いを一席」

その声を合図に、咲良と瑞樹が前に出で、慎吾を挟んで横に並んだ。

 「はいはいは〜〜〜〜い、みなさんこんにちわ〜〜〜どうも〜『ワンちゃんズ』でぇ〜す」

どうやらこのトリオ名は「ワンちゃんズ」にしたらしい・・・・

 「咲良でぇ〜す」「瑞樹でぇ〜す」「香取慎吾でこざいま〜す」
慎吾がベタなボケをかましたところで、咲良が横から凄い勢いで慎吾の頭をスリッパで叩いた。

 「全然似てへんやろ!!」

すぱーーーんといい音が響き渡る。
 しかも、咲良のツッコミが関西弁・・・・私は米神が痛み出した。

 「それにしても見事な櫻なぁ〜、桜といえば花見やな〜」
 「はいはい」
 「花見といえば宴会や、君たち宴会といえば何を連想すんねん?」
 「そうですねぇ〜やっぱりかくし芸でしょうか?」
 「そうやなぁ〜かくし芸と言われて君たちなら何を見せる?」
 「俺はモノマネですかね」
 「ほうほう、そんなら俺が見ててやるさかい、ちょっとやってみたまえ」

 モノマネと言った咲良が、慎吾にふられて、一歩前に出た。

 「それでは・・・古文の佐藤先生をやりまーす」

手を上げて叫んだ咲良に、皆が手を叩いて盛り上げる。
咲良は場が静まると、顔を猿のようにまねて見せた。
古文の佐藤先生は確かに猿っぽい顔をしているが、一応女性だ。

 慎吾と瑞樹は生徒役をやっているらしく、横並びに椅子に座っているまねをしている。

 「え〜〜〜ですかだ(ら)ここの言葉はここに掛かどぅ(る)・・・こだ(ら)!!そこ!!」

教科書を持ち、授業をする佐藤先生の真似をしているらしい。
舌足らずな先生の特徴を良く掴んでいて、私の顔もほころんでしまう。

 「授業中にお菓子は食べただ、ダメです、没収!!」
 「おいおい・・・猿におやつあげちゃだめだろ〜」
 「き〜〜〜〜っさどぅ(猿)じゃあでぃまてん!!」

あるクラスで起こった事件を再現しているらしい・・・・
こんな教師を馬鹿にするようなネタをやって、祥太郎先生が怒るんじゃないかと思い、先生を見やるが、先生はお腹を抱えて大爆笑している。
 どうやら強かに酔っているようだ。

 「ってこらこら、咲良、内輪ネタじゃおばあさんにはわからへんやろ」

まだ真似を続ける咲良に、慎吾が突っ込みを入れる。

 「それにしても、何か喉が渇いたな〜ちょっとジュース飲んでええか?」
そう言って慎吾は2ℓのペットボトルを取り出した。

 「慎吾先輩、でも俺たちの持ち時間が少ないですから、十秒以内で飲んでくださいよ」
 「分かってるがな」
 「それじゃ・・・いーち、にー、さーん、」

瑞樹と咲良のカウントと同時に、慎吾はポットボトルを口に当て、一気に飲みだした。
凄まじい勢いで、中のジュースが慎吾の身体の中に入っていく。

 「じゅぅーーー」

その声と同時に空のペットボトルを慎吾が掲げた。

 「すごーーーーい。」

祥太郎先生とおばあさまが拍手喝采で慎吾を称えた。

 「以上、ワンちゃんズでした〜〜〜〜」

三人はペコリとお辞儀をした。
たしかコントをやるって言ってなかったか?
そんな疑問が私の頭を駆け巡る。
オチはどこだ?

 「慎吾さんの今やったのは『安田大サーカス』ってお笑いのネタですわね?」

私が慎吾に文句を言おうとしたが、おばあさまの意外な言葉に、私は驚いて目を丸くする。

 「おばあさま・・・お笑いなんて見てるんですか?」
 「あら天音さんは見ないの?面白くてストレス解消になるわよ」

私がびっくりして、言葉をなくしていると、今度は祥太郎先生が前に出てきた。

 「それでは・・・僭越ながら・・・・マジックをお見せします」

そう言って祥太郎先生は照れているのか、お酒で赤くなったのか分からないほど、頬を紅潮させて、にっこりと微笑んだ。