2004年 3月 30日(火)

芸人根性!?

 「次はこのビデオを見んねん」

慎吾はそう言うと、デッキにビデオテープを突っ込んだ。

 「まだ見るんですか!?」

目を丸くして問いかけた私に、慎吾は「当たり前や〜」と胸を張って答えた。

 春休み真っ盛り、慎吾は毎日のように私の部屋に通っていた。
私に会うために来ているなら歓迎するところだが、理由は違う。

 慎吾があしげく通っている理由は、おばあさまの「秘蔵お笑いビデオ」を見る為だ。
 先日の花見の席で、おばあさまの「お笑い好き」が発覚し、慎吾とおばあさまは更に意気投合してしまった。

 それに加えて、カノンのモノマネの上手さに、慎吾は敗北感を感じたらしく、慎吾の芸人魂に火がついたそうだ。
 カノンより凄い芸をマスターするべく、おばあさまの秘蔵ビデオを全部見ると、息巻いている状態だ。

お陰で毎日毎晩、私はお笑いを見せられている。
自分の部屋で見ろと言ってみたが、慎吾の部屋にはビデオデッキが無い。
結局は私の部屋で見るしかないのだ。

 「慎吾・・・もういい加減にしたらどうですか?」
 「あかん。大阪人としてのプライドがかかってんねん」

鼻息荒く言う慎吾に、私は眩暈さえ感じる。
 大阪人としてのプライドと言われても、慎吾のやろうとしている事は「パクリ」なんじゃないかと思ったが、面倒なので黙っておいた。

結局2時間・・・・ビデオを見せられ、私はどっぷりと疲労感を感じていた。
 テンポ良過ぎるほどの掛け合いに、聞いているこっちが疲れてしまう。

やはり私にはお笑いの良さが分からない。

 「どうですか?何か良いものは見つかりましたか?」

 腕を組んで考えこんでる慎吾に、一応尋ねてみる。

 「う〜〜〜ん・・・・腹話術でモノマネってどうや?」
 「そ・・・それは難しいんじゃ・・・」
 「うん。これや!誰もやってへんからな。腹話術でモノマネ、これで決まりや!!」

 やる気満々な慎吾はガッツポーズで叫ぶ。

 「はぁ・・・・ま、頑張ってください。っていうか、どこでそれを披露するつもりですか?」
 「練習の時間も欲しいから・・・・・修学旅行あたりやな」
 「はあ・・・」
 「修学旅行で披露するさかい、楽しみにしとれよ!!」

 私はもう何も言えなかった。