| 2004年 4月 12日(月) |
咲良と瑞樹
今日も咲良と瑞樹は元気だ。朝、一度生徒会室で顔を合わせたが、二人ともニコニコと上機嫌で見ている私も嬉しくなってしまう。
なんというか、あの二人を見ていると「春」だなぁ、と思ってしまったり。いや、決して二人の頭が「春」という訳ではない。
咲良は帰国子女にしては国語や古典、社会科系の教科の成績は郡を抜いているし、英語はもちろんだ。対して、瑞樹は理数系の教科の成績が抜群にいい。尤も・・・それ以外は・・・。いや、これには触れるまい。
そんな「仲良し」な二人は今年も同じクラスになって益々ご機嫌、といった所だろうか。
「じゃぁ、天音さん〜」
「またお昼休みに」
声を揃えて私に挨拶をして、手を振りながら教室に向かう二人の姿は本当に微笑ましい物だった。
新学期が始まって、学園内は慌しい。一応、一通りのオリエンテーリングは終わったとはいえ一年生が学園に慣れるにはもう少しの時間が必要になるだろう。
それに、各部活動の勧誘や予算会議等・・・生徒会の仕事も山のようにある。そんなわけで。朝も昼も放課後も・・・私達は多忙を極めていた。
昼休み、私が生徒会室に入ると・・・朝にはあんなに機嫌良かった咲良と瑞樹がしょぼくれている。
私が入室したのにも気が付かない様で、心ここにあらず、といったところだろうか。幸い二人以外はまだ誰も来ていない。
「咲良も瑞樹も・・・どうしたんですか?」
「天音さん!」
「天音・・・先輩〜」
そっと私が声をかけると、二人は急に抱きついてきた。
よくよく見れば二人とも泣いている。
「一体、どうしたんですか?」
私の体に抱きついて、えぐえぐと泣く二人の頭をよしよししながら、私は優しい声で聞いた。
「・・・・・嫌いです〜」
「直哉さんの弟さん、怖いよ〜」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
二人の口から飛び出した名前に、私はおもわずクラクラしてしまった。2年生が・・・1年生に泣かされるなんて・・・。
いつまでも泣いている二人から、ようやくのところで話を聞き終えた私は、ますます倒れそうになった。
『お前達が生徒会役員だなんて、俺は認めない。兄ちゃんの側に居ていいのは、俺が認めた人間だけだ。お前達なんて、へ〜んだっ!』
と、昼休みになって生徒会室に向かう途中で言われた事が、咲良と瑞樹の泣いている原因だった。
私は己の浅はかさを呪った。慎吾だけでなく、この二人も早々に私がバックに付いている事を知らしめておくんだった・・・。
それにしても、これはきちんと直哉に責任をとって貰わなければいけませんね・・・。と二人を慰めながら私は心に誓った。
しかし、この時の私はもう一人・・・泣かされるだろう人間が居る事を失念していた。