2004年 4月 15日(木)

作戦会議

 直哉に「何とかしましょう」と、大見栄をきったものの・・・どうしたものか、と私は随分悩んだ。

 何と言っても、相手はあの隼人だ。彼の「筋金入り」のブラコンは一筋縄でどうにかなるものではない。簡単にどうにかなるものなら、今までに直哉がどうにかしていた筈だ。

 教室の窓から見る外は、こんなにもいい天気で緑も鮮やかなのに・・・。ただでさえ多忙なこの時期に、どうしてこんな厄介ごとを抱え込んでしまったのでしょう・・・、と私が机に頬杖をついていると大きな声で私の名前を呼びながら慎吾がやってきた。
  
 「天音〜、なんで生徒会室におらんのや〜。さがしてしまったわ〜」

 教室に私の姿があった事がそんなに嬉しいのか、と問いただしたくなるほど慎吾は上機嫌だ。慎吾のお尻の辺りに大きなふさふさとした尻尾が、幻のように見えてしまう。

 「なぁなぁ、どうしたん?何だか天音・・・めっちゃブルーやで?」

 ちょっとどいてぇな、と私の前の席の生徒をどかすと慎吾は当たり前のようにその椅子に腰を降ろし、私の顔を覗き込んでくる。

 「そんなに・・・憂鬱そうに見えますか?」
 頬杖を外さず、視線だけを慎吾に向けてそう聞いてみた。

 「おう、せっかくのべっぴんさんが台無しや〜。ほら、ここんとこ・・・皺が寄っとんねん・・・」

 ここや、ここ・・・と、慎吾の指が私の眉間に触れる。
 いけない・・・私の、美貌が・・・。眉間に皺だなんて、益々気持が暗くなってしまう。

 「どうしたもんですかねぇ・・・」
 「何が?」
 ふう、と溜息とともに漏らした私の声に慎吾が素早く反応する。

 「隼人の事ですよ・・・・・」
 「ああ〜、なかなか、元気な奴やなぁ・・・そういえば、咲良と瑞樹を泣かしたんやってなぁ。雪紀がえらい機嫌悪いわ〜」
 真面目に、怖い・・・と慎吾が漏らした。

 「咲良と瑞樹だけじゃありません。祥太郎先生もですし・・・・・とうとう直哉まで泣きが入りましたから」

 口に出してしまってから、しまった!と思ったが遅かった。

 「んん?!直哉が?!あいつでも、泣き言言うんか〜!」
 驚いたわ、と慎吾が素直な感想を漏らす。しかし、馬鹿にした様子は無かったので私はほっとした。

 「直哉も大変な弟が居たもんやなぁ・・・。そら、直哉は何でも出来て格好もええし・・・同じ男として憧れるんはわからんでも無いけど・・・」
 えらいこっちゃ・・・、と慎吾も溜息を付いた。

 「ほんでも・・・隼人?やったか。直哉はもちろん、雪紀とか天音の事は悪くは言わないんやな」
 それは、ささやかな呟きだった。けれど、私のアンテナは慎吾のその言葉に閃いた。
 
 「慎吾!偉いですよ!!!今度、たっぷりとご褒美を上げますからね!」

 私は慎吾の頭を勢い欲撫でた。

 何だかなぁ、よう分らんわ〜、とぶつぶつ言いながらも慎吾は案外嬉しそうにしている。

 そうだ、そうだった。隼人は私や雪紀の事を認めている。
 そして慎吾は私の大切な人間だと思っているからこそ、隼人の毒舌の被害にあってはいない。咲良や瑞樹、祥太郎先生の事も隼人が認めるしかない何かを・・・隼人にみせつけてやれば事は丸く収まるのではないだろうか?

 「慎吾!生徒会室に行きますよ!役員全員を・・・祥太郎先生も放送で呼び出して下さいね」

 私はそう言うと、颯爽と教室を後にした。