2004年 4月 8日(木)

新1年生

オリエンテーリングも無事終わり、私は図書館のいつのも場所でのんびり咲良と瑞樹を待っていた。
例年のことだが、今年も個性的な1年生が多い。
中でも目立っていたのは、直哉の弟隼人と、そのクラスメイトの子だ。

隼人は幼稚舎から悪名が高い。
直哉に近づく子が気に入らないとどんな手を使ってでも追い払うのは有名な話だ。
幼稚舎の時に、小学生だった直哉のクラスメイトを竹箒で追いまわしたのに始まり、最近ではモトクロスで女子部の女の子を小突き回したらしい。

隼人はとにかく手が早い。思い込みが激しいのだ。
幸いなことに、私は直哉の友人にふさわしいとみなされていて、まだあからさまな迫害を受けたことはない。
もちろん、そんなことになってもひるむ私ではないが、面倒ごとに自ら首を突っ込むほど私も好事家ではない。
だからとっとと慎吾を隼人に紹介しておいた。私の手の者にくちばしをはさむほど、隼人も暇ではないだろう。

「天音センパイ! 調べてきました!」

瑞樹と咲良が、転がるようにかけてくる。
私はその、仔犬たちが誉めてほしくて舌をだらりと伸ばしてハフハフしているような二人に、等分に微笑みかけた。

「ご苦労様。どんな子でした?」

二人にはあの、隼人をいきなりどつきたおした生きのいい1年生について調べてもらっていた。

「名前は、高見 しろ…しら、白雪。すごいですよ。外部からの転入生ですけど、転入試験ほぼ満点です。」
「ついでに隼人…君の分も調べてきました。…あいつ案外成績いいんだ…。白雪君に次いで2位です。」

二人の顔がちょっと悔しそうになる。
筋金入りのブラコンの隼人の事だ。
直哉が万年成績2位というのを聞いて、自分も真似したに違いない。
狙って2位をとるというのは、直哉同様難しいと思うのだが。

それにしても、白雪とは言いえて妙な名前だ。
本当に彼は真っ白で、その割に髪が真っ黒で際立っていて、しかも頬がばら色だった。
子供のころはさぞかし白雪姫とからかわれたことだろう。

「高見君と滝君じゃ、出席簿もすぐ近くですね。」
「成績もこんなに近いんじゃ、さぞかし二人で張り合うんでしょうね。」

「ふうん…。」
私はちょっと考えて、それからにっこり笑った。
そんなに成績のいい子なら、わが生徒会に招いてもいいだろう。おまけにちょっと可愛い子だった。
隼人が直哉の後を追って生徒会に乱入するのはほぼ確実と見られる。
白雪君が一緒に入ってくれれば、いいストッパーになってくれるかもしれない。

「今年も楽しくなりそうですね。」
「…天音センパイ、なにかたくらんでませんか?」

咲良と瑞樹が少し不安そうな顔をした。