| 2004年 6月 11日(金) |
恐怖の部屋
「い・・・いいですか?開けますよ?」
背中に咲良と瑞樹を庇いながら、私は静かに・・・出来るだけ静かに生徒会室のドアを開けた。
その瞬間、何とも言えない生臭い臭気が・・・私を襲う。
これが、ざりがにの「臭い」なのだ。私の鼻が特に敏感に出来ている訳ではない。それを証明するのは簡単な事だ。
よく見るがいい。
私の後ろに隠れた子犬コンビも、鼻を摘まみ、目には涙を浮かべている。
「天音せんぱ〜い・・・」
「臭いよ〜」
鼻声で訴えて来る姿が、また涙を誘う。
こうなった原因はただ一つ。慎吾の馬鹿が悪いのです。あんな、あんなざりがにを山のように生徒会室に持ち込んで!
あれが、当初は単なる嫌がらせでしか無いことは私が一番良く知っています。ただ、たまたま祥太郎先生が喜んでしまったものだから、その言葉尻に乗っかっただけなのです。
直哉が祥太郎先生に反対することなんてありえません。頼みの綱の雪紀は、ほとんど無視。
一応「きちんと世話をしろよ?」と注意はしましたが。
世の中「世話をするんだぞ」と言われて、それが出来る子供が居ると思っているのでしょうか?いいえ、居るはずがありません。
結局、最後には「一体誰が世話をしてると思っているの!」と、お母様方が怒るのが常なのです。
遅からず、この生徒会室のざりがに達もそうなるに決まっています。
しかし、この生臭さは異常な様な気がします。
私も、咲良や瑞樹と同様に、ハンカチで鼻を塞ぎ・・・「入りますよ」と手で合図をする。
二人が頷くのを確認した私は、何か特殊部隊になった気分です。
だだだっ、と足音も荒く室内に走って入り、一目散に窓を開け放つ。数箇所ある窓の全てが開けられたのを確認して、今度は換気の為のファンを回す。
淀んだ空気が、新鮮なものへと変わったことを肌で感じて・・・それからようやく私達3人は鼻から手を外した。
「まったく、これから毎日こんな事を繰り返すのでしょうか」
「天音さん、俺こんなの耐えられない。絶対、無理・・・」
ため息をつきながら、咲良と愚痴をこぼしあう。
おや?不思議なことに瑞樹が混ざってこないなんて。咲良が何か言えば、瑞樹も必ずそこに加わるのに・・・と、視線が瑞樹を探す。
いました。
しかし、何故ざりがにの水槽の前に?
「瑞樹・・・・・どうしたの」
「いやぁぁぁぁぁぁ〜!きっ気持ち悪い〜!!!」
顔面蒼白で、瑞樹が口を押さえながら廊下へと飛び出して行く。
一体何が、と慌てて私と咲良が覗き込んだ水槽の中には。
頭だけのざりがにや、胴体部分だけ残っているものや・・・。まさに「地獄絵図」の世界が繰り広げられていた。
「いやっ、何なのですか、これは!」
「ぎゃぁぁぁ〜雪紀さん〜」
私と咲良は、恥も外聞もなく叫び声をあげると瑞樹を追って廊下へと飛び出した。
とにかく、何が何でもざりがに達をどうにかしなければ。こんな「ざりがに部屋」には一秒だって居られません。