2004年 6月 14日(月)

ざりがにと、私

 結局、週末は一度も慎吾に会わないままで終わってしまった。

 私が先に「家には来ないで下さい。電話もしないで下さい」と言ったものの・・・今までの慎吾でしたら、必ず家にやってきて
無理やりにでも、私の部屋へ上がりこんだ筈です。

 最初は「どんなお仕置きをしましょうか」なんて考えていた私も、当の慎吾が来ないのではそれも出来ず、つまらない限りです。

 色々考えたのですよ?慎吾のために。
 私の部屋には、この間慎吾が持ち込んだ「怪しいお道具の数々」がしまってあるのですから。
 ふふふふふ、本当は私に使おうと思っていた、あんな道具やこんな道具を自分が使われてしまったら。
 一体、慎吾はどんな反応を見せてくれるのでしょうか。

 そんな風に考えて、慎吾がやってくるのを心待ちにしていたと言うのに。

 


 仕方なく、今日学校で会ったら「出入り禁止」を許してあげるつもりでしたのに。

 こんなときに限って、噛み合わないと言うのか何なのか・・・。

 朝、登校して以来、一度も慎吾には会っていないのです。もちろん、休み時間にも探してみましたし、お昼休みだって生徒会室やその他、慎吾の立寄りそうな所は全部探しました。

 それなのに。放課後の今になっても一度も会えないままだなんて・・・ありえない事です。

 
 
 その時、私の携帯が鳴りました。咲良と瑞樹に、慎吾を見つけたら電話を下さいと頼んであったのです。

 着信を見れば「瑞樹携帯」となっています。思った通りです。

 「はい、私です」

 『瑞樹です』

 「ええ、慎吾が見つかりましたか?」

 『はい・・・でも・・・・・』

 瑞樹らしくない、歯切れの悪い喋り方に私の眉が寄る。

 見つけるには、見つけらけれども・・・と、非常に困惑した瑞樹の様子が見て取れる。

 「どうしたんですか?慎吾は見つかったのでしょう?」

 『そうなんですけど、でも』

 ああ、イライラしてきます。こんなに瑞樹をおろおろさせるなんて、慎吾は一体何をしているのでしょうか?

 「瑞樹、私が行きます。何処にいるんですか?」

 聞き出した結果は、灯台下暗し。何と、あのお馬鹿は寮に居たのです。




 「あ、天音さん、こっちです〜」
 「慎吾先輩、出てきて下さいよう〜」

 慎吾の部屋の前で、咲良と瑞樹がおろおろしていた。

 「一体どうしたんですか?」

 「慎吾さんが出てこないんです」
 
 「は?」

 「週末もずっと、部屋に篭っちゃって・・・今日も学校が終わったらすぐに閉じこもっちゃうし」

 咲良が、お手上げなんです〜、と肩を落とした。


 じゃぁ、何ですか?慎吾は私に「出入り禁止」を言い渡されて、ずっと部屋に閉じこもっていたのでしょうか。

 「あの、天音先輩。慎吾先輩が・・・・・」

 瑞樹が言いにくそうにしている。

 「どうしたんですか?慎吾が何か?」
 
 「えっと・・・慎吾先輩は俺達が、騒いだせいでざりがには捨てなきゃいけなくなったし、天音先輩にも怒られたって・・・」
 「うん、そう言ってたよね」

 咲良と瑞樹が顔を見合わせながら、言った。
 
 その言葉を聞いて私の柳眉がつり上がった。

 「じゃぁ・・・この閉じこもりの理由は、ざりがになんですか?!ざりがにを捨てられた事に怒っているのですか?あのお馬鹿は!」

 何ということでしょう。私に「出入り禁止」にされた事が悲しいのではなくて「ざりがに」が原因だったなんて!

 あんまりです。

 この私とざりがにを天秤にかけて・・・慎吾は、こともあろうかざりがにを選んだのですか?

 ショックの余り・・・私の頭の中は真っ白になってしまいました。