| 2004年 6月 7日(月) |
触らぬ神に・・・
「うわっ!ちょっ・・・ちょい待ち!・・・ブレイク、ブレイクやっ!」
生徒会室の中から、慎吾の叫び声がする。次いで、ガタガタっと物があたったり、倒れたりする音もする。
私は、ドアの前で立ち尽くす。
・・・今、この部屋の中で一体何が起っているのだろうか・・・。このドアを開けるのが、物凄く怖いのですが・・・。いいえ、開けずとも理由は分かります。ここに来る前に立ち寄った慎吾の教室で『慎吾なら、会長に連れていかれたぜ〜』との情報を既に得ていますから。
・・・だから、知らないと言ったのに。
無駄な事と判っていても、私はそう思わずには居られなかった。
「ぎゃっ!堪忍、堪忍な〜。待てっちゅーてんや、ないかい!・・・雪紀〜、勘弁してや〜」
慎吾の涙交じりの、情けない声が聞こえてくる。
こんな情けない声を出すなんて、一体どんな嫌がらせを雪紀から受けている事やら・・・。
しばし逡巡して、私は意を固めるとドアを開けた。(怖いもの見たさ、とも言いますが)
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
ドアを開けた瞬間、目に飛び込んで来た光景に私は絶句してしまいました。
今、私の目の前で、一体何が起っているのでしょうか?
「遅かったな」
雪紀が私に顔を向けて、不敵にそう言い放った。
「うっわ〜、せやからやめろって言ったやないか!天音〜、見んといてや〜」
慎吾の、声。
今、ここで繰り広げられていた事。それは私の予想を遥かに超えた行為だった。まさか、まさかあの雪紀がこんな方法で報復に出るなんて・・・。やはり、雪紀も色々と変わってきているのでしょうか?
私は、ついそんな事を考えてしまった。
生徒会室にはいくつかのソファーとテーブルが置かれている。いわゆる「応接セット」とでも呼ぶべき物でしょう。その他に、執務につかう机や事務機器などもありますが。
このソファーは一人掛けのものと、数人が並んで座れるものが置いてあるのですが。
この、大きいほうのソファーの上で・・・慎吾が雪紀に組み敷かれているなんて・・・。
かなり背の高い雪紀が、それよりも更に大きな慎吾を組み敷いている光景は・・・はっきり言って、前々美しくありません。
ご丁寧に、慎吾の着ているシャツも前ははだけられ、中に着ているTシャツもお腹が丸見えに程度に捲られていて・・・。
これは・・・、これはかなり慎吾にとってショックなのでは・・・・。私の背中を汗が流れてしまいました。
「本当に、いい加減せえよ!雪紀!!」
私に見られたくない一心からか、慎吾が真剣に雪紀をどかそうと押しても雪紀はびくともしない。・・・あんなに大きな慎吾が押しても平気な雪紀は、押さえ込むのに何か効果的な技を知っているのでしょうか?それを教えて貰えれば・・・私でも、慎吾を押さえ込めるかも。
そんな考えが、つい頭の中を過ってしまいました。
「煩いぞ、慎吾。誰が、やめるかよ。俺は今、お前に嫌がらせをしてるんだからな。俺に押さえ込まれて、こんなに乱れた姿を天音に見られるのは苦痛だろ?・・・ざまぁみろ、こっちはお前のお陰でこの土日に咲良に会えなかったんだからな。・・・お前だけが楽しんで良いと思ってるのか。ん?」
言いながら、雪紀の指が慎吾の首筋を這う。
「ぎゃー、きしょい〜!寒イボがでる!!堪忍、堪忍って〜!・・・あああ、天音〜、助けてや〜」
慎吾が私に助けを求める。けれど・・・私はそれを敢て無視する事に決めました。慎吾がこんな目に逢っているのも、全ては自分が蒔いた種ですし・・・ここで雪紀の邪魔をして、後から恨まれるのも面倒ですしね。
それに、いくら何でも雪紀が・・・慎吾を相手に本当にその気になるなんて事はないでしょうから。
「雪紀、ご存分に。私が他のギャラリーを呼んで来て差し上げましょう」
「そうだな、頼む」
「嫌〜、天音やめてんか〜!だっ、誰を呼んで来るつもりやねん!!天音っ!!!」
ニヤリ、と笑う雪紀と・・・涙を流して嫌がる慎吾を背にして、私は直哉たちに教えるべく生徒会室を後にした。
くわばら、くわばら・・・。全て世はこともなし。
触らぬ神に祟りなし、ですものね。