| 2004年 7月 12日(月) |
球技大会・その1
とうとうこの日がやってきた。
あの僅かな時間でよくぞここまで・・・と、いっそ感心する程の参加者だった。
今回はクラス対抗という形ではなく、個人でチームを作って参加というルールにした。
そうしなければ私たち生徒会チームが参加出来ないからだったのだが、これはこれで良かったのかもしれない。
あちらこちらの部活でチームが組まれていたり、同じ趣味を持つもの同士・・・こっちははっきり言って、おおよそ運動には縁がないと思うような人物ばかりだったが、なかなか沢山のチームが参加してくれた。
驚いた事に会場となる大体育館だけを押さえたと思っていた雪紀は、ちゃっかり今日一日と言うことで、全ての体育館の使用許可を取り付けていた。
唖然とする私を尻目に、大会は手際よく運ばれている様子だ。
午前中最初のイベントはやはり、我らが生徒会チームと隼人率いるチームの「バドミントン」対決だった。
一応トーナメント形式を採用しているので、どちらのチームも順当に勝ちあがってきたという訳だ。もちろん、隼人と行うのは決勝戦。
向こうは「隼人・白雪」ペアでこちらは「祥太郎・瑞樹」ペアだった。
「なんで教師が出てくんだよっ!お前なんか出る資格ないじゃないかっ!」
祥太郎先生が出場している事に気が付いた途端、ネットを挟んで隼人が吠えまくる。天井の高い、バドミントン専用体育館に隼人の声が響き渡っている。
「べっつに〜。だって参加資格に教師は駄目だなんて書いてなかったよ?隼人くん、知らないの?僕以外の先生方も今回参加しているんだよ?」
小首を傾げて言う、祥太郎先生必殺のポーズだ。しかしこのポーズは意外と効果が大きいらしい。あの隼人が何も言い返してこないなんて。
・・・・・・・・・・・私も知らなかった、教師チームまで参加しているとは。
決勝が、始まった。
しかし・・・祥太郎先生の姿はどうした事か。どこから持ち出して来たのか着用しているウエァーの背中には「Shoutarou・A」のネームが。
そして良く見ればお揃いの短パン。手にしたラケットは学校の体育準備室から持ち出して来た物ではなかった。
どうみても高そうな・・・・・スポーツブランドのラケットだ。グリップ部分にも先生の名前が入っているようだ。
「あ、ごめん。出来たらあんまり風邪が当たらない様に空調の調節してもらえるかな?シャトルの方向が狂っちゃうから」
にっこりと笑って祥太郎先生に言われた審判の生徒が慌てて空調を調節しに走る。
「へーんだっ。腕に自信がないからそうやって俺を混乱させようとしてるんだろ!卑怯だぞ、祥太郎!!!」
少しの間黙っていた隼人が、再び吠え始める。それを白雪が慌てて宥めている。
「ねぇ、先生。なんか、もしかしてバドミントンやってた事ある?」
瑞樹までがそんな事を聞きだし始める。その位、祥太郎先生の姿は堂に入っていた。
「ん〜、ほんの少しだけね。あ、ほら始まるよ?」
瑞樹の質問をさらりと流して祥太郎先生はコートの中に立った。審判の笛が鳴る。
どうやら先攻は隼人の方らしい。高い身長を生かして、上空からシャトルが飛来する。
「きゃっ、こんなの無理〜」
思った以上にスピードのあるシャトルに、瑞樹が顔面をラケットで隠してしまった。
コートに落ちると思った瞬間、白いシャトルは再び宙を舞っていた。
それは「パシッ」という乾いた音を立てて、隼人側のコートに落ちている。
「す、凄い〜!先生、今の、何っ!!!」
「え〜、何って言われても〜。ただのスマッシュだよ〜」
興奮して騒ぐ瑞樹に対して、祥太郎先生は普段のまま、へろりとしている。
しかし何より一番驚いていたのは、隼人だろう。
「祥太郎!汚ねぇぞっ、お前素人じゃないだろうっ!!!!!」
案の定、顔を真っ赤にして怒っている。
飛んできたシャトルに対して微動だに出来なかった事に腹を立てているのだろう。
今にもシャトルではなくラケットが飛んできそうな勢いだ。
「別に、経験者が出ちゃいけないなんて規則もなかったと思うけど?それに僕なんて素人に毛が生えた程度だよ。あ、一応海外遠征の経験はあるけどね〜」
でもプロじゃないし・・・・・。
そう続ける祥太郎先生に、会場のギャラリー全員が驚く。
そして決勝の結果は、明らかだった。
一度も隼人たちにシャトルを拾わせる事なく、祥太郎先生・瑞樹ペア(正しくは祥太郎先生一人?)の圧勝に終わった。
次の競技は、バスケットだ。